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社労士のコンサルの始め方|人事・労務コンサルを事務所の商品にする5つの手順(テーマ選び・商品の形・値決め・最初の1社・続く仕組み)

「顧問先から評価制度の相談を受けたけれど、どう値段をつければいいかわからない」「コンサルをやりたいと思いながら、何から始めればいいか決められない」。そんな所長は少なくありません。全国の調査でも、5年後に最も強みにしたい仕事は「コンサル業務」がトップですが、実際には6割以上の事務所で、コンサルの売上はまだありません。この記事では、人事・労務のコンサルを、頼まれたときだけの仕事ではなく、事務所の「商品」として始める手順を、テーマの選び方から続ける仕組みまで順に整理します。

この記事の要点

  • 社労士のコンサルは、社会保険労務士法第2条第1項第3号の「相談に応じ、又は指導すること」にあたる仕事。人事制度・評価・賃金・採用定着・労務リスクの点検などが含まれる。
  • いまの仕事に占めるコンサル業務の割合は平均7.3%。受託業務の内訳でコンサルを「0%」と答えた事務所は63.2%。
  • 一方、5年前より需要が「増えた」は57.7%。5年後に最も強みにしたい仕事はコンサルが28.7%で最多、開業5年未満では33.3%。
  • コンサルを商品にする形は、スポットのプロジェクト型・顧問に上乗せする型・研修型の3つ。最初は顧問先の困りごとから1つのテーマを選ぶ。
  • 値決めは「時間」「成果物」「期間」の3つを組み合わせて考える。最初の1社は、すでに信頼関係のある顧問先から。

社労士がするコンサルとは:法律の上での位置づけ

社会保険労務士法第2条の「相談・指導」

社労士の仕事は、社会保険労務士法第2条第1項に定められています。このうち第3号は、次のような内容です。

事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること(これらの事項に係る法令並びに労働協約、就業規則及び労働契約の遵守の状況を監査することを含む。)

「労務管理その他の労働に関する事項」について相談に応じ、指導する。これが、社労士がするコンサルの法律の上での土台です。カッコの中にあるとおり、法令や就業規則などが守られているかを点検する労務監査も、この号に含まれています。

独占業務ではないからこそ、「商品」にする必要がある

同じ法律の第27条は、社労士でない人が報酬を得て業として行ってはいけない仕事を、第2条第1項の「第1号から第2号まで」と定めています。つまり、手続や帳簿書類の作成は社労士の独占業務ですが、第3号の相談・指導は独占業務ではありません。

人事コンサルタントや中小企業診断士など、ほかの専門家とも比べられる仕事です。だからこそ、「社労士だから頼まれる」のではなく、何を・どこまで・いくらでやるのかを決めた「商品」として示すことが大切になります。1号・2号・3号の区分や、3号業務全体の増やし方は社労士の3号業務の増やし方でまとめています。この記事では、その中でも「コンサル」を一つの商品として設計し、売り始めるところまでを掘り下げます。

社労士のコンサルで扱うテーマ

社労士が扱う人事・労務のコンサルには、たとえば次のようなテーマがあります。

テーマ中身の例
人事制度・評価制度等級・評価の基準をつくり、面談の進め方まで整える
賃金制度基本給・手当の決め方を整理し、評価とつなげる
採用・定着求人の書き方、入社後の面談、辞める理由の聞き取りの仕組み
労務リスクの点検(労務監査)労働時間・就業規則・労働契約の運用が法令どおりかを点検し、報告書にまとめる
組織づくり・管理職の育成管理職の役割を決め、部下との面談や指導の型をつくる
ハラスメント防止の体制づくり相談窓口、規程、研修をまとめて整える

どれも、手続の毎月のやりとりの中で「この会社はここに困っている」と見えてくるテーマです。社労士は、労務と人の課題を中心に経営者に伴走する立場だからこそ、こうした困りごとに早く気づけます。

実態調査で見る:コンサルの仕事の割合と、増えている需要

いまの仕事に占めるコンサルは平均7.3%、6割以上は「0%」

全国社会保険労務士会連合会の「2024年度社会保険労務士実態調査」で、事務所の売上を仕事の種類ごとに分けた割合(平均値)は次のとおりです。

仕事の種類平均値中央値
手続業務(手続に関連する相談も含む)41.5%40.0%
労働及び社会保険に関する相談業務14.3%10.0%
給与計算業務14.2%9.0%
各種規程作成、改定、整備に関する業務10.4%10.0%
コンサル業務(企画・立案・制度設計及び実施のための運用・アドバイス)7.3%0.0%

コンサル業務の中央値は0%です。同じ調査で、コンサル業務の割合を「0%」と答えた事務所は63.2%でした。コンサルの売上がある事務所のほうが少数派です。

需要は「増えた」が57.7%

同じ調査で、5年前と比べた顧客からの需要の変化を聞いた結果、コンサル業務は「増えた(計)」が57.7%、「減った(計)」が29.8%でした。労働及び社会保険に関する相談業務は71.5%、規程の作成・改定・整備は66.2%が「増えた」と答えています。

需要が「増えた」と答えた割合は、事務所の売上や人数によっても違います。

区分コンサル業務の需要が「増えた(計)」
売上500万円未満48.5%
売上1,000万円以上2,000万円未満66.6%
売上1億円以上83.2%
従業員総数1人51.3%
従業員総数21人以上80.5%

売上が大きい事務所ほど、コンサルの需要が増えたと感じています。これは相関であり、「コンサルを始めれば売上が上がる」という意味ではありません。ただ、顧問先と深く関わっている事務所ほど、コンサルの相談を受ける機会が多いことはうかがえます。

5年後の強みにしたいのは、コンサルが最多

開業社労士に「5年後、どのような業務を強みとした事務所にしたいか」を一つ選んでもらった結果は、コンサル業務が28.7%で最多、相談業務が24.4%で続きます。開業5年未満に限ると、コンサル業務は33.3%です。

ところが、開業5年未満の事務所の受託業務に占めるコンサル業務の割合は、平均8.9%、中央値は0%です。「将来の柱にしたい」と「いま売上になっている」の間に、大きな差があります。

この差の多くは、能力の問題ではなく、コンサルが「商品」になっていないことから生まれます。次の章から、商品にする手順を見ていきます。

コンサルを商品にする3つの形

コンサルの売り方には、大きく3つの形があります。最初はどれか一つから始めれば十分です。

形中身向いているテーマ売上の入り方
スポットのプロジェクト型期間と成果物を決めて、一度で完了させる評価制度・賃金制度づくり、労務監査まとまった金額が一度に入る
顧問に上乗せする型顧問契約の上位プランに、毎月の面談や支援を含める採用・定着の伴走、管理職の育成、制度の運用毎月の顧問料が上がる
研修型管理職や従業員向けに、テーマを決めて研修をするハラスメント防止、評価者研修、労働時間管理1回ごと、または年数回の契約

スポットのプロジェクト型

「3か月で評価制度をつくる」「労務監査をして報告書を渡す」のように、始まりと終わりがはっきりした形です。顧問先にとっては「何をしてもらえるか」がわかりやすく、事務所にとっては1件ごとの売上が大きくなります。一方で、終わると売上が止まるので、終わったあとの運用支援を、顧問に上乗せする型につなげると続きやすくなります。

顧問に上乗せする型

「手続」「手続+相談」「手続+相談+月1回の面談」のように、顧問契約を段階に分け、上の段階にコンサルの中身を入れる形です。毎月の売上として積み上がり、顧問先との関わりも深くなります。料金表の組み立て方は社労士の料金表の作り方と社労士の顧問料アップ完全ガイドで解説しています。

研修型

同じ内容を複数の会社に届けられるので、一度つくった資料をくり返し使えます。研修のあとに「自社の規程や運用を見直したい」という相談につながることも多く、プロジェクト型の入口として使えます。

テーマの選び方:「顧問先の困りごと」と「自分の経験」が重なるところ

最初のテーマは、次の2つが重なるところから選びます。

1. 顧問先の困りごとから

いちばん確かな材料は、すでに受けている手続と相談です。たとえば、こんな場面です。

  • 入社と退職の手続が多い会社 → 採用と定着に困っている
  • 残業代の計算で毎月質問が来る会社 → 労働時間の管理と賃金の決め方に困っている
  • 昇給の時期に「どう決めればいいか」と聞かれる会社 → 評価と賃金のルールがない
  • 従業員とのトラブルの相談が続く会社 → 管理職の関わり方や、ハラスメントの予防に課題がある

まずは、ここ半年の相談を書き出してみてください。同じような相談が3社以上から来ているテーマは、ほかの会社でも困っている可能性が高く、商品にしやすいテーマです。

2. 自分の経験から

開業前の仕事で人事や総務を担当していた、管理職として部下を育てていた、特定の業界に詳しい。こうした経験は、コンサルの説得力になります。調査でも、社労士以外の資格として中小企業診断士を持つ人は、受託業務に占めるコンサル業務の割合が平均23.3%と、全体の平均(7.3%)より高くなっています。ほかの分野の知識や経験を組み合わせることが、コンサルの強みになりやすいといえます。

テーマは一つに絞る

「人事も、賃金も、採用も、何でもできます」は、頼む側からは選びにくい言い方です。最初は一つのテーマ・一つの業種に絞ったほうが、提案の言葉も、資料も、成果の事例もそろいやすくなります。テーマを広げるのは、最初の商品で数社の実績ができてからで十分です。

商品の中身を決める:5つの項目

テーマを決めたら、次の5つを紙1枚に書き出します。これが商品の「設計図」になります。

項目決めること例(評価制度づくり)
誰に業種・規模・困りごと従業員20〜50人で、昇給の決め方が社長の感覚になっている会社
何をするか進め方と回数社長面談2回、管理職との打ち合わせ3回、説明会1回
何を渡すか成果物等級表、評価シート、評価の手引き、規程の改定案
どのくらいの期間か開始から完了まで4か月
終わったあと運用の支援初回の評価面談に同席、以後は顧問の上位プランで支援

「何を渡すか」を先に決めるのがポイントです。成果物が決まると、顧問先は完成した姿を想像でき、事務所の側も必要な時間を見積もれます。

値決めの考え方:時間・成果物・期間の3つで考える

コンサルの価格には、法律で決まった基準はありません。事務所ごとに決めることになります。ここでは金額の相場ではなく、価格を決めるときの考え方を整理します。

1. 時間から考える

まず、その商品にかかる時間を見積もります。面談・打ち合わせの時間だけでなく、準備、資料づくり、移動、修正の時間も含めます。そのうえで、「所長の1時間あたりにいくらの売上が必要か」を掛け合わせると、最低ラインの価格が出ます。

所長の1時間の売上の目安は、目標とする年間の売上を、コンサルや相談に使える年間の時間で割って考えます。手続や事務にかかる時間を差し引くと、使える時間は思ったより少ないはずです。

2. 成果物から考える

顧問先が受け取るのは「時間」ではなく、評価制度や報告書といった「成果物」と、それによって変わる会社の状態です。たとえば「昇給のたびに社長が悩む時間がなくなる」「辞める人が減る」「トラブルの火種を先に見つけられる」。成果物が会社にとってどんな意味を持つかを言葉にしておくと、価格を伝えるときの説明になります。

3. 期間から考える

同じ内容でも、1か月で仕上げるのか、半年かけて運用まで支えるのかで、必要な関わりが変わります。期間が長い商品は、月額に分けて提示すると顧問先も検討しやすくなります。

価格を決めるときの注意

  • 最初から安くしすぎない。最初の価格は、あとから上げにくいものです。
  • 「お試しで無料」にしない。無料にすると、顧問先も事務所も本気になりにくくなります。どうしても最初の実績がほしいときは、価格は決めたうえで「初回の会社だけ事例として紹介させてもらう」などの条件で調整します。
  • 範囲を書面に書く。面談の回数、修正の回数、含まないことを決めておくと、終わりのない仕事になりません。

最初の1社の取り方:既存の顧問先から始める

新しい会社にいきなりコンサルを売るのは、むずかしいものです。最初の1社は、すでに信頼関係のある顧問先から探します。

手順1:困りごとを、相手の言葉で書き留める

日々の相談の中で、社長が口にした悩みをそのままメモしておきます。「人が定着しない」「昇給をどう決めていいかわからない」「管理職が育たない」。提案のときに、この言葉をそのまま使います。

手順2:小さな提案から始める

いきなり大きなプロジェクトを提案するより、まず現状の点検(診断)を提案すると、顧問先も受け入れやすくなります。たとえば「評価と賃金の今のルールを1時間で整理して、課題を一覧にしてお渡しします」。点検の結果を見ながら、「この課題を解決するには、こういう進め方があります」と本体の提案につなげます。

手順3:書面で提案する

提案は口頭だけでなく、紙1枚の提案書にします。中身は、先ほどの「商品の設計図」の5項目と価格です。社長が社内で相談するときに、そのまま見せられる形にしておくと、決めてもらいやすくなります。

手順4:終わったら、事例にする

最初の1社が終わったら、何に困っていて、何をして、どう変わったかを短くまとめておきます。会社名を出してよいかは必ず確認します。この事例が、2社目以降の提案資料になります。

顧問先以外からの依頼を増やす方法は、社労士の営業方法や社労士のマーケティングで解説しています。

続けるための仕組み:型にする・テンプレートにする・AIを使う

コンサルが1件で終わってしまう事務所の多くは、毎回ゼロから資料をつくっています。続けるには、2件目からは1件目より楽になる仕組みが必要です。

型にする

1件目の進め方を、工程ごとに書き出します。「初回面談で聞くこと」「打ち合わせの議題」「完成までの手順」。2件目では、その工程表にそって進め、うまくいかなかったところだけ直していきます。3件ほど回すと、事務所の「標準の進め方」ができます。

テンプレートにする

ヒアリングシート、提案書、報告書、規程のひな形、研修の資料。くり返し使うものは、会社ごとに差しかえる部分だけを空けたテンプレートにしておきます。テンプレートがあれば、スタッフに一部を任せることもできるようになります。

AIを活用する

生成AIは、面談記録の要約、ヒアリング結果からの課題の整理、提案書や報告書の下書き、研修資料のたたき台づくりなどに使えます。下書きをAIに任せ、所長は中身の確認と、社長との対話に時間を使う。この分担ができると、コンサルに使える時間が増えます。

ただし、顧問先の従業員の個人情報や、会社の機密にあたる情報の扱いには注意が必要です。どの情報を入力してよいか、事務所のルールを先に決めておきましょう。使い方とルールは社労士のAI活用ガイドで、手続の時間を減らしてコンサルの時間をつくる方法は社労士事務所の生産性向上でまとめています。

よくある失敗

1. 「何でもできます」で始める

テーマを絞らないと、提案の言葉があいまいになり、紹介もされにくくなります。最初は一つのテーマで、数社の実績をつくるところから始めましょう。

2. 範囲を決めずに引き受ける

「制度をつくってほしい」とだけ言われて始めると、打ち合わせや修正が何度も続き、時間あたりの売上が大きく下がります。回数、成果物、含まないことを、最初に書面で決めておきます。

3. 顧問料の中で「おまけ」としてやってしまう

顧問先のためを思って、評価制度の相談に無料で答え続けていると、いつまでも売上になりません。顧問先にとっても、価値が見えにくくなります。相談の範囲を超えたら、別の商品として提案する線を決めておきましょう。

4. つくって終わりにする

制度は、運用が始まってから困りごとが出てきます。完成した時点で関わりが終わると、せっかくの制度が使われなくなることもあります。運用の支援まで含めて商品にしておくと、顧問先にとっても、事務所にとっても続く関係になります。

5. 手続の仕事で手いっぱいのまま始める

時間がないままコンサルを始めると、準備が足りず、満足してもらえない結果になりがちです。先に手続の仕事を仕組みにして、コンサルに使う時間を確保しておくことが、遠回りのようで近道です。

よくある質問

社労士でなくても人事・労務のコンサルはできますか?

社会保険労務士法第27条で、社労士でない人が報酬を得て業として行ってはいけないとされているのは、第2条第1項の第1号から第2号まで(手続や帳簿書類の作成など)です。第3号の相談・指導は含まれていないため、人事コンサルタントなどもコンサルティングを行っています。社労士は、手続を通じて顧問先の実情を知っていること、法令にもとづいた助言ができることを強みとして示すことが大切です。

コンサルの経験がなくても始められますか?

始められます。最初から大きなプロジェクトを受ける必要はありません。顧問先の困りごとから一つのテーマを選び、「現状の点検」のような小さな商品から始めると、経験を積みながら進め方の型をつくれます。

コンサルの料金の相場はいくらですか?

社労士のコンサルの料金には、法律で決まった基準はありません。この記事では金額の相場は示さず、かかる時間、渡す成果物、期間の3つから考える方法を紹介しています。まずは「所長の1時間あたりに必要な売上」から最低ラインを出し、成果物の意味を言葉にしたうえで、価格を決めてください。

スポットと顧問の上乗せ、どちらから始めればいいですか?

既存の顧問先にすでに相談が多く来ているなら、顧問の上位プランに相談や面談を含める形が始めやすいでしょう。評価制度づくりや労務監査のように、完成の形がはっきりしたテーマなら、スポットのプロジェクト型が向いています。プロジェクトが終わったあとの運用支援を顧問の上乗せにつなげると、両方を組み合わせられます。

出典

法令の条文と実態調査の数字は2026年10月23日時点で各発表元のページを確認した内容です。法令は改正されることがあります。