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社労士の開業は厳しい?|データで見る開業1〜5年目の現実と、後悔しないための準備

「社労士の開業は厳しい」「独立して後悔した」。そんな声を目にして、開業に踏み切れずにいる方もいるでしょう。一方で「なんとかなる」という声もあります。どちらが本当なのか。この記事では、全国社会保険労務士会連合会の実態調査の数字で開業後の現実を確かめたうえで、後悔しないために開業前にできることを整理します。

この記事の要点

  • 開業5年未満の事務所の売上の中央値は135万円。「収入なし」が17.1%、「500万円未満」が49.4%。
  • 開業5年未満の72.5%が「顧客獲得の難しさ」に不安を感じている。
  • 一方で、開業社労士の78.4%が「自由で独立した仕事ができる」、77.1%が「自分の労働時間を管理できる」と感じている。
  • 上位25%の事務所も、開業5年未満は1人・顧問先12社前後。差がつくのは、開業前に事業の中身と入口を設計したかどうか。

社労士で開業・独立している人の割合

全国社会保険労務士会連合会の事業報告によると、2026年3月31日現在の会員の内訳は次のとおりです。

区分人数割合
開業25,136人53.3%
社労士法人の社員4,362人9.2%
勤務等17,667人37.5%
合計47,165人100%

※割合は人数から計算した値です。

開業と法人の社員を合わせると約6割(62.5%)が、事務所を営む側にいます。開業社労士は1年で317人増えています。社労士にとって、開業はめずらしい選択ではありません。

現実1:開業直後の売上は、思ったより少ない

開業年数ごとの事務所の売上は、次のとおりです。

開業年数売上の中央値売上の平均
5年未満135万円612.7万円
5〜9年500万円1,427.8万円
10〜14年660万円1,889.5万円
15〜19年800万円1,830.9万円

開業5年未満では、「収入なし」が17.1%、「500万円未満」が49.4%です。開業してからの数年は、多くの事務所にとって売上を立てるまでの助走期間になっています。

また、個人で開業している社労士の社労士としての所得は、中央値200万円です(開業年数を問わない全体の値)。売上と、経費を引いて手元に残る所得は別物なので、開業後の生活費は所得で考える必要があります。くわしくは社労士の年収の実態をご覧ください。

「開業は厳しい」と言われるのは、この数字を見れば無理もありません。ただし、これは全体の真ん中の姿です。どう準備したかで、この数字は大きく変わります。

現実2:いちばんの悩みは「顧客獲得」

社労士としての仕事で感じる不安やストレスを聞いた結果では、「顧客獲得の難しさ」に不安を感じる人は全体で63.7%、開業5年未満では72.5%にのぼります。

開業社労士全体で、不安やストレスを感じる割合が高い項目は次のとおりです。

項目当てはまる(計)
必要となる専門的知識の深さと広さ85.9%
業務上の責任の重さ84.5%
顧客獲得の難しさ63.7%
経営面での責任の重さ61.1%
顧客との関係構築61.0%
業務量の多さ60.8%
経済面の不安定さ47.1%

社労士試験に合格した方なら、専門知識は勉強で補えます。けれど、顧客を獲得する力は、試験では身につきません。開業して最初にぶつかる壁は、実務よりも「仕事をどう取ってくるか」です。

現実3:それでも、開業した人の多くは「自由」を感じている

厳しい数字ばかりではありません。同じ調査で、社労士としての仕事の状況を聞いた結果は次のとおりです。

項目当てはまる(計)
専門性の高い仕事ができる87.6%
社会的責任のある仕事ができる81.1%
労働者等や企業に貢献できていると実感できる81.1%
他から干渉されずに自由で独立した仕事ができる78.4%
自分の労働時間を管理できる77.1%
経済的に有利になる49.1%

開業社労士の約8割が、自由に、自分の時間で、人や会社の役に立つ仕事ができていると感じています。一方で「経済的に有利になる」は49.1%と半々です。開業のよさは自由と手応えにあり、収入は自分で設計しないと付いてこない、というのが現実に近い姿でしょう。

「なんとかなる」人と「後悔する」人の違い

上位25%の事務所を見ると、30歳前後で開業した場合、開業5年未満で売上600万円(所長1人・顧問先12.5社)、開業5〜9年で2,800万円(4人・顧問先50社)です。伸びている事務所も、最初は1人・顧問先10社前後から始まっています。

違いが出るのは、その後です。支援の現場で見ていると、開業後に伸び悩む事務所には、次のような共通点がよくあります。

  • 「何でもやります」で開業し、誰に向けた事務所かが決まっていない。
  • 顧問料を安く設定して、あとから上げられなくなった。
  • 紹介を待つだけで、事務所を知ってもらう入口をつくっていない。
  • 手続で毎日が埋まり、商品づくりや発信に時間を使えない。

どれも、実務の力とは別の話で、開業前から準備できることです。

後悔しないために、開業前にやっておく5つのこと

  1. 生活費の見通しを立てる。開業5年未満の売上の中央値は135万円です。売上が立つまでの生活費を、貯えや家族の収入、勤めながらの準備期間などで見通しておきます。
  2. 誰の、どんな困りごとを助けるかを決める。一言で言えると、紹介も検索もされやすくなります。
  3. 料金表を決めておく。開業時の料金は、あとから上げにくいものです。社労士の顧問報酬の決め方を参考にしてください。
  4. 紹介以外の入口を用意する。ホームページ、記事、SNS、セミナーなど。社労士が顧問先を増やす方法で解説しています。
  5. 1年目の目標を顧問先の数で決める。実態調査の売上の中央値では、顧問先10〜19社で600万円です。フツーの社労士脱却研究所では、開業初年度に中央値の550万円(顧問先10社前後)を最初の目標にしています。

手続きの進め方は社労士の開業準備の流れ、費用は社労士の開業ガイド【2026年版】にまとめています。後悔しやすいことと、その一つひとつの対策は社労士の開業で後悔しやすい7つのことで解説しています。

開業1年目の過ごし方

開業1年目は、実務よりも入口を回すことに時間を使います。

時期やること
1〜3か月目知り合いへのあいさつ、初回相談の型づくり、ホームページと記事の公開
4〜6か月目セミナーや相談会を開く。紹介してくれる人との関係づくり
7〜12か月目問い合わせ・初回相談・契約の数を毎月振り返り、効いた入口に時間を寄せる

営業が苦手な方は、売り込まずに相談が来る形をつくる社労士の営業方法も参考にしてください。

よくある質問

社労士の開業は、やめたほうがいいですか?

一概には言えません。開業5年未満の売上の中央値は135万円と厳しい数字ですが、開業社労士の約8割は「自由で独立した仕事ができる」と感じています。開業前に事業の中身と入口を準備し、生活費の見通しを立てておけば、後悔する可能性は小さくできます。

社労士で独立すると、何年で食べていけますか?

全国の実態では、売上の中央値は開業5年未満で135万円、5〜9年で500万円です。何も準備しなければ数年かかるのがふつうです。開業前から顧問先を増やす入口を設計しておけば、初年度に中央値の550万円を目指すこともできます。

開業1年目の売上は、どれくらいが目安ですか?

調査は「開業5年未満」でまとめているため、1年目だけの数字はありません。5年未満の中央値は135万円、上位25%(30歳前後で開業)は600万円です。最初の目標は、顧問先10社前後(売上の中央値で600万円の水準)に置くとよいでしょう。

出典

売上と所得は個人事務所の代表と社労士法人の代表社員(14,469人)、仕事の状況と不安やストレスは開業社労士(開業+法人の社員)15,251人の回答です。会員数の割合は、事業報告の人数から計算した値です。