社労士の顧問報酬の相場と決め方|報酬基準がない今の料金表の作り方と、源泉徴収・勘定科目
「社労士の顧問報酬は、いくらにすればいいのか」。開業したばかりの方からも、何年も続けてきた方からも、よく聞く悩みです。結論からいえば、社労士の顧問報酬に全国共通の基準はありません。だからこそ、自分の事務所の料金表は、根拠をもって自分で決める必要があります。この記事では、公表データから見える目安と、料金表の作り方を順に整理します。
この記事の要点
- 社労士の顧問報酬には決まった基準がない。2002年の社労士法改正で、社労士会と連合会の会則から「報酬に関する規定」が削除された。
- 全国の実態調査から逆算すると、顧問先1社あたりの売上は年30万〜40万円台(月2万5,000円〜3万円台)が目安。
- 料金表は「従業員数」で段階を分け、顧問報酬に含める範囲と別料金にする作業を最初に決めておく。
- 個人の社労士に払う顧問報酬は、支払う会社が源泉徴収する(100万円以下の部分は10.21%)。社労士法人への支払いは対象外。
社労士の顧問報酬には「基準」がない
かつては、社労士会の会則に報酬の基準が定められていました。しかし、2002年(平成14年)11月27日に公布された社会保険労務士法の改正で、社労士会と全国社会保険労務士会連合会の会則の記載事項から「開業社会保険労務士の受ける報酬に関する規定」が削除されました。この部分は公布の日から施行されています。
それ以来、顧問報酬は各事務所が自由に決めるものになっています。インターネットで「社労士 報酬基準」「社労士 報酬一覧」と調べると、いろいろな金額表が出てきますが、それは各事務所が自分で決めた料金か、昔の基準を参考にしたものです。どれかが「正しい相場」というわけではありません。
基準がないということは、裏を返せば自分の事務所の価値に合わせて、料金を設計できるということです。
公表データから見える目安:1社あたり年30万〜40万円台
顧問報酬そのものの全国平均は、公的な調査では公表されていません。ただし、全国社会保険労務士会連合会の「2024年度社会保険労務士実態調査」には、顧問先の数ごとの売上の中央値が載っています。ここから1社あたりの目安を逆算できます。
| 顧問先の数 | 売上の中央値 | 1社あたりの目安(年) |
|---|---|---|
| 10〜19社 | 600万円 | 約32万〜60万円 |
| 20〜29社 | 900万円 | 約31万〜45万円 |
| 30〜39社 | 1,200万円 | 約31万〜40万円 |
| 40〜49社 | 1,500万円 | 約31万〜38万円 |
| 50〜59社 | 2,000万円 | 約34万〜40万円 |
※「1社あたりの目安」は、売上の中央値を顧問先の数の上限と下限で割った参考値です。スポットの仕事の売上も含みます。調査が公表している数字ではありません。
どの区分でも、1社あたりの年間売上はおおむね30万〜40万円台です。月に直すと2万5,000円〜3万円台になります。同じ調査で、事務所の売上のうち顧問契約による売上は平均71.9%です。顧問報酬の水準が、そのまま事務所の売上の水準を決めていると考えてよいでしょう。
自分の事務所の年間売上を顧問先の数で割ってみて、この目安を大きく下回るなら、顧問報酬に見直しの余地があります。
顧問報酬の決め方:3つの考え方
料金の決め方には、大きく3つの考え方があります。どれか1つではなく、組み合わせて使います。
| 考え方 | 何を基準にするか | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ① 手間から決める | 1社にかかる時間 × 自分の時間単価 | 赤字の顧問先を出さないための「下限」を決めるとき |
| ② 規模から決める | 顧問先の従業員数 | 料金表をわかりやすくするとき |
| ③ 価値から決める | 顧問先の経営にとっての効果 | 相談・制度づくり・伴走など、手続以外の支援を売るとき |
① 手間から決める:まず「下限」を出す
最初に、1社あたりにかかっている時間を出します。手続、相談への返事、月次の確認、年度更新や算定基礎届などの年間の作業を、月あたりの時間にならします。
たとえば、月4時間かかる顧問先で、自分の時間単価を5,000円とおくなら、月2万円が「これより下げると赤字になる」下限です。時間単価は、目指す年収と、1年で顧問先の仕事に使える時間から逆算します。
② 規模から決める:従業員数で段階を分ける
社労士の料金表で最も多いのは、従業員数で段階を分ける形です。従業員が増えるほど、入社・退社の手続や相談の数が増えるため、手間と料金が比べやすく、顧問先にも説明しやすいからです。
| 従業員数の段階(例) | 料金の決め方の考え方 |
|---|---|
| 〜4人 | 最低料金。これより下げない |
| 5〜9人 | 手続の件数が増えはじめる段階 |
| 10〜19人 | 就業規則の作成義務が生じる規模(常時10人以上) |
| 20〜29人 | 相談・規程の改定が増える段階 |
| 30〜49人 | 採用・評価・定着など、人の仕組みの相談が増える段階 |
| 50人以上 | 産業医や衛生委員会など、労務管理の体制づくりが必要になる段階 |
金額は事務所ごとに決めるものなので、ここではあえて書いていません。段階の分け方は、顧問先の困りごとが変わる節目に合わせると、値付けの理由を説明しやすくなります。
③ 価値から決める:手続以外の支援には別の物差しを
手続と給与計算は、どの事務所でも中身が近いため、どうしても価格で比べられます。一方、相談、規程・制度づくり、採用や定着の支援などは、顧問先の経営に与える効果で価値が決まります。
実態調査でも、5年前と比べて需要が増えた仕事として「相談」71.5%、「規程の作成・改定」66.2%、「コンサル」57.7%が挙がっています。この領域を、手続の顧問とは別の物差しで値付けすることが、顧問報酬の水準を上げるいちばんの近道です。くわしくは社労士の顧問料アップ完全ガイドで解説しています。
スポット・就業規則作成・給与計算まで含めた料金表の全体の作り方と、ホームページでの見せ方は社労士の料金表の作り方にまとめています。
顧問報酬に「含めるもの」と「別料金にするもの」を決める
料金表と同じくらい大事なのが、顧問報酬で何をするかの範囲です。ここがあいまいなまま契約すると、作業が増えても報酬は変わらず、1社あたりの手間だけが増えていきます。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 顧問報酬に含める | 日常の手続、電話・メールでの労務相談、法改正の情報提供 |
| 別料金にすることが多い | 給与計算、年度更新・算定基礎届、就業規則の作成・大幅な改定、助成金の申請、労基署の調査の立ち会い、研修の講師 |
どこまでを含めるかに正解はありません。大切なのは、契約書と料金表に書き、契約のときに顧問先と確認しておくことです。あとから範囲を整理するのは、最初に決めるより何倍も気をつかいます。
顧問報酬を見直すときの進め方
すでに顧問先がいて、今の顧問報酬が安すぎると感じる場合は、次の順番で進めます。
- 新しく契約する顧問先から、新しい料金表を使う。今の顧問先との話し合いは要りません。
- 顧問報酬に含めている作業を一覧にする。契約時より増えた作業がないかを確かめます。
- 従業員数が契約時から増えた顧問先は、料金表の段階に合わせて見直しを相談します。
- 値上げをお願いするときは、金額を伝える前の3〜4か月の準備で、提供している価値を顧問先に見える形にしておきます。
値上げの伝え方と文例は、社労士の顧問料アップ完全ガイドにまとめています。
顧問報酬の源泉徴収と勘定科目(顧問先から聞かれたら)
「社労士 顧問報酬」で調べる方には、払う側の会社の担当者も多くいます。顧問先から聞かれたときのために、税金の扱いも押さえておきましょう。
源泉徴収
所得税法第204条第1項第2号は、源泉徴収の対象となる報酬として「弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士……の業務に関する報酬又は料金」を挙げています。個人の社労士に顧問報酬を払う会社は、源泉徴収をして納める必要があります。
| 1回の支払額 | 源泉徴収する税額(所得税と復興特別所得税) |
|---|---|
| 100万円以下 | 支払額 × 10.21% |
| 100万円を超える | (支払額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円 |
請求書で報酬の額と消費税の額がはっきり分かれていれば、報酬の額だけを対象にできます。たとえば顧問報酬3万円(税別)なら、源泉徴収する税額は3,063円です。
一方、社労士法人に払う場合は、この源泉徴収の対象になりません(所得税法第204条は個人に払う報酬が対象のため)。請求書の書き方も変わるので、事務所の形に合わせて顧問先に案内しておくと親切です。
勘定科目
顧問先の会社では、社労士の顧問報酬を「支払報酬」や「支払手数料」の科目で処理するのが一般的です。決まった科目があるわけではないので、毎期同じ科目で処理するよう顧問先に伝えておけば十分です。税務の判断が必要な場合は、顧問先の税理士に確認してもらいましょう。
よくある質問
社労士の顧問報酬の相場はいくらですか?
公的な調査で顧問報酬そのものの平均は公表されていません。全国社会保険労務士会連合会の2024年度実態調査の、顧問先の数ごとの売上の中央値から逆算すると、顧問先1社あたりの年間売上はおおむね30万〜40万円台、月に直すと2万5,000円〜3万円台が目安です。ただし、この数字にはスポットの仕事の売上も含まれます。
社労士会が決めた報酬基準はありますか?
ありません。2002年11月27日に公布された社会保険労務士法の改正で、社労士会と連合会の会則の記載事項から、開業社労士の報酬に関する規定が削除されました。現在は、各事務所が自分で料金を決めています。
顧問報酬とスポット報酬は、どう分ければいいですか?
毎月くり返し発生する手続や相談を顧問報酬に、年に一度の作業や、規程の作成・助成金の申請・調査の立ち会いなど、発生するかどうかが会社によって違う作業をスポット報酬にするのが基本です。どこまでを含めるかは、契約書と料金表に書いておきましょう。
社労士の顧問報酬は源泉徴収が必要ですか?
個人の社労士に払う場合は必要です。所得税法第204条第1項第2号の対象に社会保険労務士が含まれています。1回の支払額が100万円以下なら支払額の10.21%を源泉徴収します。社労士法人に払う場合は対象になりません。
出典
- 参議院「社会保険労務士法の一部を改正する法律案」(第155回国会、平成14年11月27日公布・法律第116号)
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/155/meisai/m15505154043.htm - 全国社会保険労務士会連合会・社会保険労務士総合研究機構「2024年度社会保険労務士実態調査」詳細版(2024年11月8日公表)
https://www.shakaihokenroumushi.jp/Portals/0/doc/nsec/souken/2024/202411_2024srchousa_shousai.pdf - e-Gov法令検索「所得税法」第204条
https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033 - 国税庁 タックスアンサー No.2798「弁護士や税理士等に支払う報酬・料金」(令和8年4月1日現在法令等)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2798.htm
法令と税率は2026年10月19日時点で各発表元のページを確認した内容です。税務の個別の判断は、税理士または税務署にご確認ください。
