社労士の将来性|AIや電子申請で仕事はなくなるのか?データで見る需要の変化と、開業社労士が今からできる備え
「AIが進んだら、社労士の仕事はなくなるのでは」「電子申請が当たり前になったら、手続の仕事は減るのでは」。これから開業する方からも、すでに事務所を営む所長からも、よく聞く不安です。結論を先に言うと、社労士という仕事が丸ごとなくなる兆しは、公表されている数字からは見えません。ただし、中身は確実に変わりつつあります。この記事では、全国社会保険労務士会連合会と厚生労働省が公表している数字だけを使って、社労士の需要がどう変わっているのか、これから伸びる仕事と減る仕事、そして今からできる備えを整理します。
この記事の要点
- 連合会の会員は47,165人(2026年3月31日現在)で、1年で928人増えた。開業は25,136人。
- 開業社労士に5年前と比べた需要の変化を聞くと、「増えた」は相談 71.5%、規程 66.2%、コンサル 57.7%。一方、助成金は「減った」43.6%が「増えた」42.1%を上回った。
- 社会保険・労働保険の主要な手続の電子申請率は76%(前年から3%増)。手続の「作業」は、これからも軽くなっていく。
- 会社の側では、正社員の人手不足を示す指数が+47ポイント(2026年8月1日現在)、労働局への「いじめ・嫌がらせ」の相談は55,614件で14年連続最多。労務・人の困りごとは減っていない。
- 将来性を高める備えは、相談・コンサルを商品にする、得意分野を決める、発信する、作業を仕組みにするの4つ。
社労士の将来性が気になる理由
社労士の将来を心配する声には、大きく2つの理由があります。
ひとつは、電子申請の広がりです。社労士の仕事の中心は、長く社会保険や労働保険の手続でした。行政の手続がオンラインで完結するようになれば、「書類を作って窓口に出す」作業の価値は下がっていきます。
もうひとつは、生成AIの登場です。文章の下書きや、法令の調べものをAIがこなすようになり、「専門家に聞かなくてもAIに聞けばいい」と考える会社が出てくるのでは、という不安です。
どちらも、まったくの的外れではありません。ただ、「仕事がなくなるかどうか」を考えるときは、感覚ではなく、社労士の数、顧客からの需要、会社の側の困りごとの3つを数字で見ると、落ち着いて判断できます。順番に見ていきます。
社労士の数は増え続けている
まず、社労士の数です。全国社会保険労務士会連合会の「令和7年度 事業報告」によると、都道府県の社労士会に所属する個人会員は次のとおりです。
| 区分 | 2025年3月31日 | 2026年3月31日 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 開業 | 24,819人 | 25,136人 | +317人 |
| 法人の社員 | 4,127人 | 4,362人 | +235人 |
| 勤務等 | 17,291人 | 17,667人 | +376人 |
| 合計 | 46,237人 | 47,165人 | +928人 |
社労士法人も3,301法人と、1年で198法人増えています。厚生労働省の発表では、登録者数は47,407人(2026年8月31日現在)です。
また、2026年度(第58回)の社労士試験は、受験者42,510人に対して合格者3,961人(合格率9.3%)でした。前年の合格者2,376人(合格率5.5%)から大きく増えています。
仕事が先細りしている資格なら、開業する人や法人は減っていくはずです。会員の数が増え続けていることは、少なくとも「社労士として食べていける場がある」と考える人が多いことを示しています。
一方で、これは同じ地域で事務所を選ぶ会社にとって、選択肢が増えるということでもあります。将来性を考えるうえでは、「社労士の仕事があるか」と同時に、「その中で自分の事務所が選ばれるか」を考える必要があります。開業後の売上の実態は社労士の年収の実態にまとめています。
実態調査で見る需要の変化:増えた仕事と減った仕事
需要の変化を知るいちばん確かな手がかりは、連合会と社会保険労務士総合研究機構が行った「2024年度社会保険労務士実態調査」です。全国の社労士に調査票を送り、25,408人が回答した大規模な調査で、開業社労士(開業と法人の社員、15,251人)に「5年前と比べた顧客からの需要の変化」を聞いています。
| 業務 | 増えた(計) | 減った(計) |
|---|---|---|
| 労働及び社会保険に関する相談業務 | 71.5% | 19.2% |
| 各種規程の作成・改定・整備 | 66.2% | 23.9% |
| 手続業務(手続に関連する相談も含む) | 59.1% | 32.0% |
| コンサル業務(制度設計・運用のアドバイスなど) | 57.7% | 29.8% |
| 給与計算業務 | 50.1% | 36.2% |
| 助成金業務 | 42.1% | 43.6% |
| 執筆・講演業務 | 26.4% | 54.1% |
ここから読み取れることは3つあります。
- 相談・規程・コンサルは、はっきり伸びている。「増えた」が「減った」を大きく上回っています。
- 手続と給与計算も、全体としてはまだ増えている。ただし「減った」と答えた人も3割を超えていて、事務所によって差が出はじめています。
- 助成金は「減った」が「増えた」を上回った。助成金の制度の変化に左右されやすい仕事だといえます。
調査の報告書は、多くの業務で需要が増えたとする割合が減ったとする割合を上回っていることから、日本全体で見た社労士の業務は増加傾向にあるように見受けられる、とまとめています。
また、とくに大きく増減したと感じる業務を自由に答えてもらったところ、大きく増えたものとして労務相談、コンサルティング、トラブル・ハラスメント対応が、大きく減ったものとして助成金、手続、給与計算がよく挙げられていました。
つまり、需要は「減っている」のではなく、手続中心から、相談・コンサル中心へと重心が移っていると見るのが実態に近いでしょう。
所長たちも、5年後は相談・コンサルを強みにしたいと考えている
同じ調査で、開業社労士に「5年後、どのような業務を強みとした事務所にしたいか」を一つだけ選んでもらうと、次のようになりました。
| 5年後に最も強みとしたい業務 | 割合 |
|---|---|
| コンサル業務 | 28.7% |
| 相談業務 | 24.4% |
| 手続業務 | 13.0% |
| 規程の作成・改定・整備 | 8.3% |
| 給与計算業務 | 5.0% |
| 執筆・講演業務 | 4.2% |
| 助成金業務 | 4.1% |
ところが、いま事務所が受けている仕事の割合(平均)を見ると、手続業務が41.5%で最も大きく、相談業務は14.3%、コンサル業務は7.3%にとどまります。
需要が伸びている仕事と、事務所が実際に受けている仕事のあいだには、まだ大きな差があります。この差を埋められる事務所ほど、将来性が高いと考えられます。3号業務を商品にする具体的な方法は社労士の3号業務の増やし方で解説しています。
電子申請はどこまで広がったか
次に、電子申請です。連合会の「令和7年度 事業報告」には、厚生労働省やデジタル庁などが参加する電子申請の利用促進の協議を毎月開いた結果として、主要な手続の電子申請率が前年から3%増えて76%になったと書かれています。
社労士の側の準備も進んでいます。同じ事業報告では、電子申請に使う電子証明書を持っている会員は2026年3月末で18,079人、開業と法人の社員の会員の60.9%でした。
事務所ごとに見ると、実態調査では電子申請を「7割以上利用している」事務所が52.3%ある一方で、「利用していない」事務所も32.8%ありました(個人事務所の代表と社労士法人の代表社員、14,469人の回答)。
| 電子申請の利用 | 割合 |
|---|---|
| 7割以上利用している | 52.3% |
| 5割以上利用している | 7.0% |
| 3割以上利用している | 2.6% |
| 3割未満利用している | 5.2% |
| 利用していない | 32.8% |
電子申請で、手続の仕事は消えるのか
電子申請が広がると、窓口に行く時間や紙の書類を準備する時間は減ります。手続の「作業」にかかる時間は、これからも短くなっていくでしょう。
一方で、電子申請になっても、「いつ、どの届出が必要か」「この従業員はどの保険の対象になるか」を判断する仕事は残ります。会社の担当者が自分で電子申請できるようになっても、入社や退職、育児休業のたびに迷う場面は出てきます。
手続そのものの値打ちが下がるのではなく、「作業の代行」の値打ちが下がり、「判断と相談」の値打ちが上がると考えると、需要の変化の数字ともつじつまが合います。電子申請と生成AIで事務所の時間をつくる方法は社労士事務所の生産性向上にまとめています。
AIで変わる仕事、残る仕事
生成AIについては、連合会も動いています。「令和7年度 事業報告」では、生成AIと社労士業務との関わりについて今後数年間の環境の変化と社労士の将来を展望し、社労士が社会や国民に対して果たすべき役割を再定義したシナリオを作成したこと、電子申請の問い合わせに答えるチャットボットを公開したこと、AIの活用事例を集めていることなどが報告されています。資格の団体そのものが、AIを前提にした働き方を考えはじめている段階です。
AIで仕事がどこまで変わるかは、いま断定できる人はいません。AIの性能も、制度も、これから変わっていくからです。そのうえで、現時点で考えられる変化を整理すると、次のようになります。
| 仕事 | AIや電子申請で変わりやすいこと | 人に残りやすいこと |
|---|---|---|
| 手続 | 書類の作成・提出の作業、必要書類の案内文 | どの手続が必要かの判断、例外的なケースへの対応 |
| 給与計算 | 計算そのもの、明細の作成 | 勤怠ルールの設計、計算ルールの見直しの相談 |
| 規程づくり | ひな形の作成、条文の比較・整理 | その会社の働き方に合わせた中身の判断、社長との話し合い |
| 相談 | 一般的な法令の説明、論点の洗い出し | 会社の事情をふまえた「この会社ではこうしましょう」という判断と責任 |
| コンサル | 資料づくり、データの整理 | 採用・定着・評価・組織づくりを、社長と一緒に考えて進めること |
表を見るとわかるように、AIが得意なのは「文章にする」「整理する」「計算する」部分です。反対に、労務や人の問題には、社長の考え方、従業員一人ひとりの事情、社内の人間関係がからみます。会社の事情をくみ取り、責任を持って判断し、経営者に伴走する役割は、AIだけでは置きかえにくいと考えられます。
AIを事務所で使うときの具体的な使い方と、個人情報の扱いなど守るべきルールは社労士のAI活用ガイドで解説しています。
会社の側の困りごとは減っていない
社労士の将来性を考えるとき、もうひとつ大切なのは、顧問先になる中小企業の側に、労務や人の困りごとがどれだけあるかです。ここでは、厚生労働省の統計で確認できる2つの数字を紹介します。
人手不足は続いている
厚生労働省の「労働経済動向調査」(2026年8月)では、2026年8月1日現在の正社員等の労働者過不足判断D.I.(「不足」と答えた事業所の割合から「過剰」と答えた割合を引いた数字)は、調査産業計で+47ポイントの不足超過でした。パートタイム労働者も+26ポイントの不足超過です。
正社員では「運輸業、郵便業」「建設業」「学術研究、専門・技術サービス業」などで、とくに人手不足感が高くなっています。
人が足りない会社にとって、採用、定着、育成、働きやすい職場づくりは経営の課題そのものです。手続の代行だけでなく、こうした課題に一緒に取り組める社労士への期待は、これからも高まると考えられます。
職場のトラブルの相談も多い
厚生労働省の「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(2026年7月7日公表)では、全国の労働局などに寄せられた総合労働相談は119万8,010件で、18年連続で100万件を超えています。
このうち、会社と労働者のあいだの民事上のトラブルの相談で最も多いのは「いじめ・嫌がらせ」で55,614件(前年度比1.1%増)、14年連続で最多でした。なお、職場のパワーハラスメントの相談は労働施策総合推進法にもとづいて別に扱われているため、この55,614件には含まれていません。
職場のトラブルは、起きてから対応するより、ルールづくりや管理職への研修で起きにくくするほうが会社の負担は小さくなります。実態調査で、相談や規程の需要が増えたと答えた人が多いことと、これらの数字は同じ方向を向いています。
将来性を高めるために、今からできる4つのこと
ここまでの数字をまとめると、社労士の仕事は「なくなる」のではなく、「作業から、判断と伴走へ」と重心が移っているといえます。この変化を味方にするために、開業社労士や開業を考えている方が今からできることは、次の4つです。
1. 相談・コンサルを「顧問契約の商品」にする
需要が最も伸びているのは相談とコンサルです。ところが、多くの事務所では「頼まれたら無料でやる仕事」になっていて、売上の柱になっていません。
月に1回の面談、評価制度の見直し、管理職研修など、何をどれだけするのかを決めて、料金をつけた商品にすることが第一歩です。手続の作業がAIや電子申請で軽くなるほど、顧問料の中身を「作業量」ではなく「相談と判断の価値」で説明できる事務所が強くなります。料金の考え方は社労士の顧問料アップ完全ガイドをご覧ください。
2. 得意分野を決める
社労士の数が増え続けるなかで、「何でもできます」という事務所は、会社から見ると違いがわかりにくくなります。
業種(建設、運輸、介護、飲食など)や、テーマ(採用・定着、ハラスメント対策、評価制度、障害年金など)で、「この分野ならこの事務所」と思い出してもらえる得意分野を持つと、紹介も検索も集まりやすくなります。人手不足が強い業種は、そのまま得意分野の候補になります。
3. 発信して、見つけてもらう入口をつくる
実態調査では、事務所として「特段情報発信はしていない」が50.8%でした。ホームページを開いている事務所は39.9%、SNSでの発信は9.3%です。
相談やコンサルは、手続とちがって「何をしてくれるのか」が外から見えにくい仕事です。だからこそ、ホームページやメールマガジン、SNSで考え方や事例(個人が特定できない形で)を伝え続けることが、選ばれる理由になります。発信の進め方は社労士のマーケティング|顧問先が増える仕組みの作り方で解説しています。
4. 作業を仕組みにして、所長の時間をつくる
相談やコンサルに時間を使いたくても、手続と給与計算で一日が終わってしまっては、何も変わりません。
まだ電子申請を使っていないなら、まず電子申請から。そのうえで、案内文や発信の下書きなど、くり返し書く文章は生成AIに手伝ってもらう。作業を仕組みに任せ、空いた時間を顧問先との対話に回すことが、将来性を高めるいちばん確実な備えです。
社労士試験の受験を考えている方へ
この記事は開業社労士向けに書いていますが、受験を考えている方にも同じことが言えます。社労士の資格そのものの需要は数字で見るかぎり堅調です。ただし、資格を取っただけで仕事が来る時代ではありません。合格後にどんな会社の、どんな困りごとを助けたいのかを、勉強しながら考えておくと、開業でも勤務でも資格を活かしやすくなります。
よくある質問
社労士の仕事はAIでなくなりますか?
公表されている数字を見るかぎり、社労士の仕事が丸ごとなくなる兆しはありません。連合会の会員は1年で928人増え、実態調査でも相談業務の需要が「増えた」と答えた開業社労士は71.5%でした。一方で、書類づくりや文章の下書きなどの作業は、AIや電子申請で短くなっていくと考えられます。作業の代行だけに頼るのではなく、相談や判断の仕事を増やしていくことが大切です。
電子申請が進むと、手続の仕事は減りますか?
主要な手続の電子申請率は76%まで上がっていて、窓口に出向く作業は減っています。実態調査でも、手続業務の需要が「減った」と答えた人は32.0%いました。ただし「増えた」は59.1%で、全体としてはまだ増えています。電子申請になっても、どの手続が必要かを判断し、迷う場面で相談に乗る仕事は残ります。
これから伸びる社労士の仕事は何ですか?
実態調査で「5年前より需要が増えた」と答えた割合が高いのは、相談業務(71.5%)、規程の作成・改定・整備(66.2%)、コンサル業務(57.7%)です。自由回答でも、労務相談、コンサルティング、トラブル・ハラスメント対応が大きく増えた仕事としてよく挙げられていました。人手不足が続く会社に向けた、採用・定着・評価などの支援も期待が高まっていると考えられます。
社労士は今から目指しても遅くないですか?
遅すぎるということはありません。2026年度の試験では合格者が3,961人と前年から大きく増え、会員の数も増え続けています。ただ、そのぶん「資格を持っている人」は増えていきます。合格後にどんな分野で、どんな会社を助けたいのかを早めに考えておくと、資格を活かしやすくなります。
出典
- 全国社会保険労務士会連合会「令和7年度 事業報告(第1号議案)」組織・会員数、デジタル推進に関する事業、新しい視点によるこれからの社労士業務に関する事業
https://www.shakaihokenroumushi.jp/Portals/0/doc/nsec/kouhou/2026/giannsho/第1号議案.pdf - 全国社会保険労務士会連合会・社会保険労務士総合研究機構「2024年度社会保険労務士実態調査」詳細版(2024年11月公表)。「15.電子申請利用率」「20.宣伝や情報発信の有無、方法」「27.受託業務範囲の内訳」「32.過去と比べた需要変化」「33.将来の自身の社労士事務所像」
https://www.shakaihokenroumushi.jp/Portals/0/doc/nsec/souken/2024/202411_2024srchousa_shousai.pdf - 厚生労働省「第58回社会保険労務士試験の合格者発表」(2026年)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76425.html - 厚生労働省「労働経済動向調査(令和8(2026)年8月)の概況」結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keizai/2608/dl/4kekkagaiyo.pdf - 厚生労働省「「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します」(2026年7月7日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00235.html
会員数・電子申請率・試験結果・統計の数字は2026年10月23日時点で各発表元のページを確認した内容です。実態調査の需要の変化・5年後の強みは開業社労士(開業と法人の社員、15,251人)、電子申請・情報発信・業務の内訳は個人事務所の代表と社労士法人の代表社員(14,469人)の回答です。
