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社労士の売上の壁|1,000万円・2,000万円・3,000万円で「変えるもの」が違う

社労士事務所の売上は、ある金額で止まりやすいと言われます。よく聞くのは「1,000万円の壁」「3,000万円の壁」です。実は、この壁は段階ごとに中身が違います。1,000万円の壁と3,000万円の壁は、同じやり方の延長では越えられません。この記事では、全国の実態調査の数字から、壁ごとに何を変えればいいのかを整理します。

この記事の要点

  • 売上1,000万円以上の事務所は33.8%、3,000万円以上は12.6%、1億円以上は2.2%。
  • 売上の中央値で見ると、1,000万円は顧問先25〜30社、2,000万円は50〜59社、3,000万円は80〜89社の水準。
  • 1,000万円の壁は「入口と単価」、2,000万円の壁は「人と仕組み」、3,000万円の壁は「所長の仕事の入れかえ」で越える。
  • 上位25%の事務所も、開業5年未満は1人・顧問先12社前後。次の5年で顧問先を35〜50社、人を3〜4人に増やしている。

売上の段階ごとに、届いている事務所の割合

全国社会保険労務士会連合会の「2024年度社会保険労務士実態調査」で、開業社労士の事務所の年間売上を「その金額以上の事務所が何%あるか」に直すと、次のようになります。

売上その金額以上の事務所の割合
550万円(中央値)約半数
1,000万円33.8%
2,000万円19.3%
3,000万円12.6%
5,000万円6.6%
1億円2.2%

1,000万円を越えるのは3事務所に1つ、3,000万円を越えるのは8事務所に1つです。売上の中央値は550万円で、半数の事務所は1,000万円の手前で止まっています。

壁は「顧問先の数」で見るとわかりやすい

同じ調査の、顧問先の数ごとの売上の中央値を重ねると、それぞれの壁がどこにあるかがはっきりします。

顧問先の数売上の中央値段階
10〜19社600万円中央値の水準
20〜29社900万円1,000万円の壁の手前
30〜39社1,200万円1,000万円を越えた段階
50〜59社2,000万円2,000万円の段階
80〜89社3,000万円3,000万円の段階
100社以上5,500万円5,000万円の段階

顧問先の数の分布を見ると、30社以上の事務所は約3割(29.4%)、50社以上は約2割(18.8%)です(区分ごとの割合を足し合わせた値)。売上の壁は、そのまま顧問先の数の壁でもあります。

ただし、顧問先の数だけを追いかければいいわけではありません。顧問先が増えれば、手続も相談も増えます。どの段階で、何を変えるかが大事です。

1,000万円の壁:「入口」と「単価」を変える

この段階でよく起きていること

売上が500万〜900万円で止まっている事務所の多くは、所長1人で、顧問先は10〜20社前後です。実態調査でも、所長1人だけの事務所が56.4%を占めます。

  • 新しい顧問先は、ほぼ紹介だけ。いつ依頼が来るか読めない。
  • 顧問料は開業したときの金額のまま。
  • 手続と給与計算で毎日が埋まり、新しいことを考える時間がない。

越え方

1,000万円の壁は、人を増やす前に越えられる壁です。変えるのは2つです。

  1. 紹介以外の入口をつくる。ホームページ、ブログ、SNS、セミナーなど、事務所を知らない会社が見つけてくれる場所を用意します。実態調査では、売上1,000万〜2,000万円未満の事務所の48.1%がホームページを開設しているのに対し、500万円未満では26.4%です(相関であり、因果ではありません)。
  2. 単価を見直す。顧問先が15社なら、1社あたり月1万円の見直しで年180万円の差になります。新規の料金表から変えれば、今の顧問先と話し合う必要もありません。

具体的な進め方は、社労士のマーケティング、社労士の集客方法13選と社労士の顧問報酬の決め方で解説しています。

2,000万円の壁:「人」と「仕組み」を変える

この段階でよく起きていること

顧問先が30〜40社を越えると、所長1人では手が回らなくなります。

  • 手続の期限に追われ、相談への返事が遅れがちになる。
  • スタッフを採用したいが、教える時間がない。仕事のやり方が所長の頭の中にしかない。
  • 新しい顧問先を断る、または受けても質が下がる。

越え方

ここからは所長1人の頑張りでは越えられません。実態調査の「事業拡大モデル」(売上が上位25%の事務所)を見ると、それがよくわかります。

開業した年齢開業5年未満開業5〜9年
30歳前後600万円(1人・顧問先12.5社)2,800万円(4人・50社)
40歳前後700万円(1人・12社)1,800万円(3人・35社)

(売上/従業員総数・顧問契約社数。いずれも上位25%の事務所の値)

伸びている事務所も、最初の5年は1人・顧問先12社前後です。次の5年で、顧問先を35〜50社に増やしながら、人を3〜4人に増やしています。

この段階で変えるのは次の3つです。

  1. 仕事の手順を書き出す。手続や給与計算の手順を、誰が見てもわかる形にします。
  2. 任せる仕事と、所長がやる仕事を分ける。期限のある定型の仕事から任せます。
  3. 道具で手間を減らす。電子申請、クラウドの給与計算、生成AIでの文書づくりなど。くわしくは社労士事務所の生産性向上とAI活用で解説しています。

3,000万円の壁:「所長の仕事」を入れかえる

この段階でよく起きていること

3,000万円の手前まで来た事務所は、スタッフもいて、顧問先も多い状態です。それでも止まるのは、多くの場合所長がまだ現場の仕事を抱えているからです。

  • 難しい手続や大事な顧問先の対応は、結局所長がやっている。
  • 顧問報酬の水準が手続中心のままで、顧問先が増えるほど忙しくなる。
  • 事務所の売上が、所長の時間の量で決まっている。

越え方

3,000万円の壁を越えるには、所長の仕事を「手続をする人」から「商品をつくり、顧問先の経営に伴走する人」へ入れかえます。

  1. 手続以外の商品をつくる。相談、規程・制度づくり、採用や定着の支援など、手続とは別の価値で値付けできる商品です。実態調査では、5年前より需要が増えた仕事として「相談」71.5%、「規程の作成・改定」66.2%、「コンサル」57.7%が挙がっています。
  2. 上位のプランを用意する。手続中心の顧問契約の上に、経営の相談まで含めたプランを置くと、1社あたりの単価が変わります。
  3. 事務所の運営を数字で見る。顧問先ごとの手間と売上、スタッフ1人あたりの売上を毎月見て、どこに時間を使うかを決めます。

手続以外の商品づくりは3号業務の増やし方、顧問先の経営に伴走する考え方は経営伴走支援とは?で解説しています。

最初の職員の迎え方は社労士事務所の採用、法人にするかどうかの考え方は社労士の法人化にまとめています。

段階ごとの「変えるもの」一覧

段階顧問先の目安主に変えるもの所長の時間の使い方
〜1,000万円〜30社入口(紹介以外)と単価実務をしながら、週に数時間を発信と商品づくりに
1,000万〜2,000万円30〜50社人の採用と、仕事の手順化定型の仕事を任せはじめる
2,000万〜3,000万円50〜80社道具での効率化と、任せる範囲の拡大現場の仕事を減らし、顧問先の相談に時間を使う
3,000万円〜80社前後〜手続以外の商品と、上位プラン商品づくりと、顧問先の経営への伴走

※顧問先の目安は、実態調査の顧問先の数ごとの売上の中央値から置きかえた参考値です。

フツーの社労士脱却研究所では、開業初年度に550万円、2年目に1,000万円、3〜5年目に3,000万円、5〜8年目に5,000万円〜1億円を段階の目安にしています。どの段階でも、「次の壁で何を変えるか」を先に知っておくと、準備を前倒しできます。

よくある質問

社労士で売上1,000万円を超えるのは難しいですか?

全国の実態調査では、売上1,000万円以上の事務所は33.8%です。3事務所に1つは越えているので、特別な事務所だけの話ではありません。売上の中央値で見ると、顧問先25〜30社が1,000万円の目安です。

売上3,000万円の事務所は、何人で運営していますか?

売上が上位25%に入る事務所のうち、30歳前後で開業した事務所は、開業5〜9年で売上2,800万円・従業員4人・顧問先50社です。3,000万円の段階では、所長1人ではなく、スタッフと一緒に運営しているのがふつうです。

顧問先を増やすのと、単価を上げるのは、どちらが先ですか?

顧問先が少なく、1社あたりの単価が全国の目安(年30万〜40万円台)より低いなら、単価の見直しが先です。単価がすでに目安に近いなら、入口をつくって顧問先を増やすことが先になります。顧問先の増やし方は社労士が顧問先を増やす方法で解説しています。

出典

売上・顧問先の数は、個人事務所の代表と社労士法人の代表社員(14,469人)の回答です。「その金額以上の割合」と「30社以上・50社以上の割合」は、調査の区分ごとの割合を足し合わせた値です。