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社労士の売上アップは「顧問先数×単価」の逆算から|実態調査の数字で考える3つの打ち手

「売上を上げたい」と思っても、何から手をつければいいのかわからない。開業から売上1,000万円前後で伸び悩んでいる所長先生から、いちばん多く聞く悩みです。売上アップの近道は、がんばる量を増やすことではなく、売上を式に分けて、どこを動かすかを先に決めることです。この記事では、全国の社労士事務所の実態調査の数字を物差しにして、その考え方を整理します。

この記事の要点

  • 社労士事務所の売上は「顧問先の数 × 1社あたりの単価 + スポット」。売上の約7割(71.9%)は顧問契約です。
  • 顧問先の数ごとの売上の中央値は、10〜19社で600万円、30〜39社で1,200万円、50〜59社で2,000万円。
  • 売上上位25%の事務所は、開業5〜9年で顧問先を35〜50社まで増やし、人を雇って体制を広げています。
  • 打ち手は3つ。①顧問先を増やす入口をつくる ②単価を見直す ③手続以外の商品をつくる。

売上は「顧問先の数 × 単価 + スポット」で決まる

社労士事務所の売上は、ほとんどが顧問契約の積み上げです。全国社会保険労務士会連合会の「2024年度社会保険労務士実態調査」では、事務所の売上のうち顧問契約による売上の割合は平均71.9%でした。

なので、売上はこう分けて考えられます。

売上 = 顧問先の数 × 1社あたりの月額 × 12か月 + スポットの仕事

売上を伸ばす方法は、この式のどこかを大きくすることしかありません。

  • 顧問先の数を増やす
  • 1社あたりの月額(単価)を上げる
  • スポットの仕事を増やす、または顧問契約につながるスポットをつくる

「何から手をつければいいかわからない」ときは、たいてい、この3つのどれを動かすのかが決まっていません。

式の分け方そのものは、noteの記事「社労士の売上は「顧問先数×単価」に分けると動かす場所が決まる」でも解説しています。

まず、いまの自分の位置を確かめる

同じ調査の、顧問先の数ごとの売上の中央値です。自分の事務所の顧問先の数と売上を、この表に当てはめてみてください。

顧問先の数売上の中央値1社あたりの目安(年)
10〜19社600万円約32〜60万円
20〜29社900万円約31〜45万円
30〜39社1,200万円約31〜40万円
40〜49社1,500万円約31〜38万円
50〜59社2,000万円約34〜40万円

※「1社あたりの目安」は、売上の中央値を顧問先の数の上限と下限で割った参考値です(スポットの売上も含みます)。調査が公表している数字ではありません。

この表から、2つのことがわかります。

  1. 売上は、顧問先の数とほぼ比例している。1社あたりの年間売上は、どの区分でもおおむね30万〜40万円台に収まります。
  2. 同じ顧問先の数なのに、売上が表より大きく下回るなら、単価に伸びしろがある。顧問先の数のわりに売上が少ない事務所は、顧問料が低いまま据え置かれていることが多いです。

全事務所の売上の中央値は550万円、顧問先の数の中央値は10社です。「顧問先10社・売上550万円前後」が、いまの社労士事務所の真ん中だと考えてください。くわしい分布は社労士の売上の実態にまとめています。

目指す段階を決める:550万円→1,000万円→3,000万円→1億円

売上アップは、いまの段階によって打ち手が変わります。フツーの社労士脱却研究所では、次の段階を目安にしています。

段階時期の目安主な打ち手
550万円(中央値)を越える開業1年目誰に何を売るかを決め、紹介以外の入口をつくって顧問先を10社前後に
1,000万円2年目顧問先を25〜30社に。開業時の顧問料を見直し、単価を整える
3,000万円3〜5年目所長1人の上限を越える段階。スタッフを採用し、手続を仕組みで回す
5,000万円〜1億円5〜8年目経営伴走などの高単価の商品と、任せられる組織をつくる

全国では、売上1,000万円以上の事務所は33.8%、3,000万円以上は12.6%、1億円以上は2.2%です。段階が上がるほど、所長が実務をする量を減らし、商品と組織で売上をつくる方向に変わっていきます。

上位25%の事務所は、どう伸びているか

実態調査の概要版には、売上が全体の上位25%に入る事務所を「事業拡大モデル」として、開業年齢と開業年数ごとにまとめた表があります。

開業した年齢開業5年未満開業5〜9年開業10〜14年
30歳前後600万円(1人・顧問12.5社)2,800万円(4人・50社)2,700万円(4人・54社)
40歳前後700万円(1人・12社)1,800万円(3人・35社)1,898万円(3人・42社)

(売上/従業員総数・顧問契約社数。いずれも上位25%の事務所の値)

伸びている事務所も、開業5年未満は1人・顧問先12社前後で始まっています。違いが出るのは次の5年です。顧問先を35〜50社まで増やし、同時に人を3〜4人に増やしています。

全体では所長1人だけの事務所が56.4%です。1人で手続と給与計算を回していると、受けられる顧問先の数には上限があります。売上を伸ばすことは、多くの場合「人を増やして、所長が手続以外の仕事に時間を使えるようにする」こととセットです。

打ち手1:顧問先が増える「入口」をつくる

顧問先を増やすには、新しい会社が事務所を知る入口が必要です。紹介だけに頼っていると、依頼が来るかどうかは相手まかせになります。

実態調査では、事務所としての情報発信について、全体の50.8%が「特段情報発信はしていない」と答えています。売上の区分で見ると、差ははっきりしています。

売上の区分事務所ホームページを開設特段情報発信はしていない
500万円未満26.4%64.0%
1,000万〜2,000万円未満48.1%41.2%
5,000万〜1億円未満78.8%13.8%
1億円以上88.8%9.0%

これは「発信すれば売上が上がる」という因果を示すものではありません。ただ、売上の高い事務所で、発信をしていないところはほとんどないのは事実です。

入口づくりで押さえたいのは、次の3点です。

  • 誰に向けた事務所かを一言で言えるようにする。「何でも相談できる社労士」は、紹介する側も説明しにくいものです。
  • ホームページに、問い合わせる理由を置く。事務所概要と料金表だけでは、問い合わせは増えません。
  • 紹介してくれる人に、渡しやすい材料を用意する。小冊子やチェックシートなど、「これを渡すだけで喜ばれる」ものがあると紹介が生まれやすくなります。

顧問先が増え続ける仕組みの考え方は社労士のマーケティング、集客の入口のつくり方は社労士の集客方法13選、紹介を仕組みにする方法は紹介が自然に生まれる「紹介エンジン」構築術で解説しています。発信を続けているのに顧問契約につながらない場合は、noteの記事「情報発信を続けても顧問契約に届かない事務所に共通すること」も参考にしてください。

打ち手2:単価を見直す

顧問先の数のわりに売上が少ないなら、先に単価を見直すほうが効果は早く出ます。顧問先が10社なら、1社あたり月1万円上げるだけで年間120万円の差になります。

単価の見直しで大事なのは、値上げを「お願い」にしないことです。

  • 顧問料が、いまの仕事量に見合っているかを社内で確かめる(対応件数、相談の回数、手続の数など)。
  • 顧問先に、毎月どれだけの仕事をしているかを報告として見せておく。
  • 改定は、契約の更新時期に合わせて、理由とあわせて伝える。

顧問料を上げる4つの道筋と、そのまま使えるお知らせ文の例は社労士の顧問料アップ完全ガイドにまとめています。値上げを切り出す前の準備については、noteの記事「社労士の顧問料値上げは、切り出す前に決まっている」でくわしく書いています。

もう1つの考え方は、単価の高い仕事を顧問契約に入れることです。くわしくは次の打ち手3で説明します。

打ち手3:手続以外の「商品」をつくる

実態調査で、事務所が受けている仕事の割合(平均)は次のとおりです。

仕事の種類割合(平均)
手続業務41.5%
相談業務14.3%
給与計算業務14.2%
規程の作成・改定10.4%
コンサル業務7.3%

仕事の4割は手続です。手続は欠かせない仕事ですが、顧問先から見ると「やってもらって当たり前」の仕事で、価格の比較もされやすい分野です。

一方で、顧問先の社長が本当に困っているのは、採用、定着、評価、組織づくりといった経営の課題です。ここに対して、社労士事務所が商品として形にしたサービスを持つと、顧問料の水準そのものが変わります。たとえば次のようなものです。

大切なのは「何でもできます」ではなく、メニューと価格を決めて、誰が担当しても同じ品質で提供できる形にすることです。形になっていれば、紹介する人も説明しやすく、スタッフに任せることもできます。

売上アップのためのチェックリスト

まずは次の項目を確かめてみてください。

  • いまの顧問先の数と、1社あたりの月額を書き出した
  • 上の表に当てはめて、「数」と「単価」のどちらに伸びしろがあるかを決めた
  • 新しい顧問先が事務所を知る入口が、紹介以外に1つ以上ある
  • 事務所が誰の、どんな困りごとに強いのかを一言で言える
  • 顧問料が開業時のまま、何年も見直していない顧問先を把握している
  • 手続と給与計算以外に、価格を決めて提供できるサービスが1つ以上ある
  • 所長でなくてもできる仕事を、人やAIに任せる計画がある

まとめ

  • 社労士事務所の売上は「顧問先の数 × 単価 + スポット」。売上の約7割は顧問契約です。
  • 顧問先の数ごとの売上の中央値は、10〜19社で600万円、30〜39社で1,200万円、50〜59社で2,000万円。1社あたりは年30万〜40万円台が目安です。
  • 上位25%の事務所は、開業後5〜9年で顧問先を35〜50社に増やし、同時に人を増やしています。
  • 打ち手は、①入口をつくる ②単価を見直す ③手続以外の商品をつくる、の3つ。どれを動かすかを先に決めることが、売上アップの第一歩です。

出典

売上・顧問先・情報発信・業務割合に関する数字は、個人事務所の代表と社労士法人の代表社員(14,469人)の回答です。