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社労士で年収1,000万円・3,000万円の事務所はどんな姿か|売上の段階ごとの人数・顧問先数・仕事の中身【2024年度実態調査】

「社労士で年収1,000万円」「年収3,000万円の社労士事務所」という言葉をよく見かけます。ただ、その多くは所長の年収と事務所の売上をまぜて話しています。この記事では、まず2つの違いを整理し、全国社会保険労務士会連合会の実態調査の数字だけを使って、年収1,000万円・3,000万円がどれくらい珍しいのか、そして売上1,000万円・3,000万円の事務所が実際にどんな体制で、どんな仕事をしているのかを見ていきます。

この記事の要点

  • 「年収」は所長本人の所得や役員報酬、「売上」は事務所全体の売上。売上の中央値は550万円、個人開業の所得の中央値は200万円で、まったく別の数字。
  • 個人開業で所得900万円以上は11.8%、1,200万円以上は6.6%。調査のいちばん上の区分「2,000万円以上」は2.8%で、年収3,000万円がどれだけいるかは調査からはわからないほど少数。
  • 売上1,000万〜2,000万円の事務所は平均2.3人・顧問先の中央値30社。3,000万〜5,000万円の事務所は平均5.1人・顧問先の中央値75社。
  • 上位25%の事務所でも、売上2,800万円の段階で個人開業の所得は800万円(項目ごとに出した参考値)。所長の年収1,000万円は、売上でいえば数千万円規模の話になる。

まず整理:「年収」と「売上」は別の数字

全国社会保険労務士会連合会(社会保険労務士総合研究機構)の「2024年度社会保険労務士実態調査」は、お金の数字を3種類に分けて聞いています。

調査で聞いている数字中身回答した人中央値
年間売上(収入)金額事務所全体の売上個人事務所の代表と社労士法人の代表社員(14,469人)550.0万円
個人事業の所得個人で開業している人の、社労士としての事業所得個人で事務所を開業している人(13,061人)200.0万円
法人の社員の役員報酬社労士法人の社員(役員)本人の報酬社労士法人の社員(2,190人)600.0万円

売上からは、スタッフの給料、家賃、ソフトの利用料、会費などの経費が出ていきます。「売上1,000万円の事務所」と「年収1,000万円の所長」は、まったく別の話です。

また、社労士法人には社員(役員)が複数いることもあります。法人の売上が大きくても、それを1人の報酬として受け取っているとは限りません。

この記事では、所長本人のお金を「年収(所得・役員報酬)」、事務所全体のお金を「売上」と書き分けます。

所長の年収1,000万円・3,000万円は、全体の何%か

個人で開業している社労士の所得

調査の区分を「その金額以上の人が何%いるか」に足し合わせると、次のとおりです。

所得その金額以上の人の割合
600万円以上22.6%
900万円以上11.8%
1,200万円以上6.6%
1,500万円以上4.6%
2,000万円以上2.8%

調査の区分は「900万〜1,200万円未満」のように区切られているので、ちょうど1,000万円以上の割合は出せません。所得1,000万円前後より上の人は、個人開業の1割前後と考えるのが正確です。

社労士法人の社員の役員報酬

役員報酬その金額以上の人の割合
600万円以上48.7%
900万円以上28.5%
1,200万円以上16.9%
1,500万円以上9.6%
2,000万円以上5.4%

法人の社員は個人開業より高い区分の割合が多くなっています。ただし、規模が大きくなった事務所が法人化している面もあるので、「法人にすれば報酬が上がる」という意味ではありません。

年収3,000万円は、調査では測れないほど少ない

調査の区分のいちばん上は「2,000万円以上」です。その割合は、個人開業で2.8%(約36人に1人)、法人の社員で5.4%です。年収3,000万円以上の人がこの中にどれだけいるのかは、調査からはわかりません。

「社労士で年収3,000万円」は、少なくとも全国の開業社労士の中では、ごく一部の人の話です。ネットで見かける「年収3,000万円も目指せる」という言葉は、こうした分布を知ったうえで読む必要があります。

事務所の売上で見ると:1,000万円以上は3つに1つ、3,000万円以上は8つに1つ

一方、事務所の売上で見ると、数字の印象はかなり変わります。

売上その金額以上の事務所の割合
1,000万円以上33.8%
2,000万円以上19.3%
3,000万円以上12.6%
5,000万円以上6.6%
1億円以上2.2%

「年収1,000万円」「年収3,000万円」と検索している人の中には、実は売上1,000万円・3,000万円の事務所を思い浮かべている人も多いはずです。売上なら、1,000万円以上は3事務所に1つ、3,000万円以上は8事務所に1つあります。

売上の段階ごとの「壁」の越え方は、社労士の売上の壁|1,000万円・2,000万円・3,000万円で「変えるもの」が違うにまとめています。ここからは、それぞれの売上の事務所がどんな姿をしているかを見ていきます。

売上の段階ごとの事務所の姿:人数と顧問先の数

調査では、売上の区分ごとに、事務所の人数(所長を含む)や顧問先の数を集計しています。

売上平均の人数所長1人だけの割合顧問先の数(中央値)
500万円未満1.2人84.4%2社
500万〜1,000万円1.4人63.2%15社
1,000万〜2,000万円2.3人31.4%30社
2,000万〜3,000万円3.6人8.5%50社
3,000万〜5,000万円5.1人3.1%75社
5,000万〜1億円8.4人0.6%120社
1億円以上25.6人3.1%230社

(区分の上限は「未満」。人数は「あなたを含む事務所の規模」として聞いた従業員総数)

売上1,000万円の事務所:2〜3人、顧問先30社前後

売上1,000万〜2,000万円の事務所では、所長1人だけが31.4%、2人が27.5%、3人が18.0%です。所長1人か、スタッフを1〜2人置いている事務所が中心で、顧問先の中央値は30社です。

500万〜1,000万円の段階では所長1人が63.2%なので、1,000万円を越えるあたりで「人を入れるかどうか」が分かれ目になっていることがわかります。

売上3,000万円の事務所:4〜6人、顧問先75社前後

売上3,000万〜5,000万円の事務所では、4〜6人が49.1%と約半数、7〜9人が14.7%です。所長1人だけの事務所は3.1%しかありません。顧問先の中央値は75社です。

売上3,000万円は、所長1人の頑張りで届く金額ではなく、チームで回している事務所の売上だと言えます。

法人化している割合

事務所の形も、売上とともに変わります。個人事務所の割合は次のとおりです。

売上個人事務所一人法人社員が2人以上の社労士法人
1,000万〜2,000万円91.8%5.3%2.9%
2,000万〜3,000万円80.3%12.3%7.4%
3,000万〜5,000万円66.6%17.2%16.2%
5,000万〜1億円49.4%19.3%31.3%
1億円以上25.5%18.0%56.5%

売上3,000万円台でも、3分の2は個人事務所のままです。法人が多数派になるのは5,000万円を越えたあたりからです。

仕事の中身:売上が大きくても、柱は手続と給与計算

顧問契約の比率が上がる

売上のうち、顧問契約から入る割合(平均)は、売上500万円未満で62.6%、1,000万〜2,000万円で80.1%、3,000万〜5,000万円で85.0%です。反対に、スポットの仕事の割合(平均)は37.4%、19.9%、15.0%と下がっていきます。

売上が大きい事務所ほど、毎月決まって入る顧問料が売上の土台になっています。

給与計算を受けている事務所が増える

給与計算の売上がまったくない(0%)事務所の割合は、売上500万円未満で61.6%ですが、1,000万〜2,000万円で21.7%、3,000万〜5,000万円で14.3%に下がります。給与計算が売上に占める割合(平均)は、それぞれ10.4%、17.2%、19.1%です。

上位25%の事務所の、仕事ごとの売上

調査の「事業拡大モデル」(売上などが上位25%の位置の値)では、仕事ごとの売上も出ています。30歳前後で開業した事務所の、開業5〜9年の値は次のとおりです。

仕事売上(上位25%の位置)
手続(手続に関連する相談を含む)940万円
給与計算501万円
労働・社会保険の相談260万円
規程の作成・改定・整備255万円
助成金148.5万円
コンサル25万円

(いずれも項目ごとに独立して算出された値で、合計しても売上の値とは一致しません)

上位の事務所でも、売上の柱は手続と給与計算です。「3,000万円の事務所はコンサルで稼いでいる」というイメージとは違い、手続・給与計算の土台の上に、相談や規程づくりを重ねている形です。

それでも、コンサルの需要は売上が大きい事務所ほど増えている

5年前と比べたコンサル業務の需要が「増えた」「やや増えた」と答えた割合は、売上500万円未満で48.5%、1,000万〜2,000万円で66.6%、3,000万〜5,000万円で72.8%、1億円以上で83.2%です。将来の事務所像として「コンサル業務」を選んだ割合も、500万円未満の25.4%から、1億円以上の39.4%まで高くなっています。

今の売上の柱は手続と給与計算でも、売上の大きい事務所ほど、次の柱として相談やコンサルを見ていることがわかります。手続以外の商品の作り方は3号業務の増やし方で解説しています。

情報発信:売上が大きい事務所ほど、複数の方法で発信している

売上ホームページニュースレター等メールマガジン特段発信していない
500万円未満26.4%6.9%2.0%64.0%
500万〜1,000万円40.9%16.1%4.1%49.8%
1,000万〜2,000万円48.1%22.6%5.8%41.2%
2,000万〜3,000万円56.8%28.2%10.1%32.9%
3,000万〜5,000万円66.2%34.6%13.2%24.7%
1億円以上88.8%54.7%31.1%9.0%

売上3,000万〜5,000万円の事務所では、3分の2がホームページを持ち、3分の1がニュースレターなどを出しています。ただし、これは相関です。発信したから売上が上がったのか、売上が大きいから発信に手が回るのかは、この調査からは区別できません。

売上と所長の年収のあいだ:上位25%モデルで見る

では、売上がどれくらいになると、所長の年収は1,000万円に近づくのでしょうか。調査には、売上の区分ごとの所得の表はありません。代わりに参考になるのが、年代・開業年数ごとの「標準モデル」(中央値)と「事業拡大モデル」(上位25%の位置)です。30歳前後で開業した場合の値は次のとおりです。

開業年数モデル人数売上顧問先個人開業の所得法人の社員の役員報酬
5年未満標準(中央値)1人189万円4社50万円408万円
5年未満上位25%1人600万円12.5社200万円650万円
5〜9年標準(中央値)2人1,200万円26社500万円510万円
5〜9年上位25%4人2,800万円50社800万円780万円
10〜14年上位25%4人2,700万円54社837.5万円1,200万円

注意したいのは、この表の値は項目ごとに別々に計算されていることです。調査の報告書も「実態としてこのような事務所が存在することを示しているわけではない」と断っています。所得は個人開業の人だけ、役員報酬は法人の社員だけから計算しているので、「売上2,800万円の所長の所得が800万円」と言い切ることはできません。

それでも、おおまかな傾向は読み取れます。

  • 上位25%の位置でも、個人開業の所得は800万円台。所長の年収1,000万円は、売上でいえば数千万円規模の事務所の話になる。
  • 売上が大きくなるころには、人数も4人前後に増えている。売上が増えた分は、スタッフの給料などにも回っている。
  • 年収3,000万円は、どのモデルにも出てこない。どの売上の事務所なら届くのかは、この調査からはわからない。

到達までの道筋:段階ごとに「次に変えるもの」が違う

ここまでの数字をつなげると、売上の段階ごとに事務所の姿は次のように変わっています。

段階人数の目安顧問先の目安この段階で起きていること
500万〜1,000万円所長1人が中心15社前後手続中心。発信していない事務所が約半数
1,000万〜2,000万円2〜3人30社前後人を入れるかどうかの分かれ目。給与計算が増える
2,000万〜3,000万円3〜4人50社前後所長1人だけの事務所は1割未満になる
3,000万〜5,000万円4〜6人75社前後チームで回す。3分の1が法人
1億円以上平均25人前後200社以上半数以上が社員2人以上の法人

(人数・顧問先は、売上の区分ごとの平均の人数と顧問先の数の中央値から置きかえた目安)

この流れから言えるのは、次の3つです。

  1. 1,000万円までは、顧問先の数と単価で届く。顧問先15社から30社への増加が中心です。顧問先の増やし方は社労士の売上アップは「顧問先数×単価」の逆算からで解説しています。
  2. 3,000万円は、人を入れて任せる前提の金額。所長1人で売上3,000万〜5,000万円の事務所は3.1%しかありません。手順を書き出し、任せる仕事を決め、道具で手間を減らすことが前提になります(社労士事務所の生産性向上とAI活用)。
  3. 所長の年収は、売上が伸びたあとについてくる。売上が増えても、人件費などの経費も増えます。年収の目標は、売上の目標とは別に、経費の見通しと一緒に立てる必要があります。

フツーの社労士脱却研究所では、開業初年度に売上550万円、2年目に1,000万円を段階の目安にしています。これはあくまで事務所の売上の目安で、所長の年収の目標ではありません。

よくある質問

社労士で年収1,000万円の人は、どれくらいいますか?

2024年度の実態調査では、個人で開業している社労士のうち、所得900万円以上の人は11.8%、1,200万円以上の人は6.6%です。調査の区分の関係で、ちょうど1,000万円以上の割合は出せませんが、個人開業の1割前後と考えるのが正確です。社労士法人の社員では、役員報酬900万円以上が28.5%、1,200万円以上が16.9%です。

年収3,000万円の社労士はいますか?

調査の区分のいちばん上は「2,000万円以上」で、個人開業の2.8%、法人の社員の5.4%です。年収3,000万円以上の人がこの中にどれだけいるかは、調査からはわかりません。いるとしても、ごく一部です。一方、事務所の売上が3,000万円以上の事務所は12.6%あります。「年収3,000万円」と「売上3,000万円」を取り違えないようにしましょう。

所長の年収1,000万円には、売上はいくら必要ですか?

経費のかけ方で変わるので、一律には言えません。参考として、調査の事業拡大モデル(上位25%の位置)では、30歳前後で開業した事務所の開業5〜9年の値が、売上2,800万円・4人・顧問先50社、個人開業の所得800万円です(項目ごとに別々に計算した値)。所長の年収1,000万円は、少なくとも売上が数千万円規模の事務所の話だと考えておくのが現実的です。

所長1人で売上3,000万円は可能ですか?

全国の実態では、売上3,000万〜5,000万円の事務所のうち、所長1人だけの事務所は3.1%です。平均の人数は5.1人で、4〜6人の事務所が約半数です。不可能ではありませんが、ほとんどの事務所はスタッフと一緒に運営しています。

出典

  • 全国社会保険労務士会連合会・社会保険労務士総合研究機構「2024年度社会保険労務士実態調査」詳細版(2024年11月8日公表)。「11.開業形態」〔表11-1〕、「13.事務所の規模」〔表13-1〕、「20.宣伝や情報発信の有無、方法」〔表20-2〕、「22.年間売上(収入)金額」〔図22_1〕〔表22-6〕〔表22-7〕、「23.個人事業の所得」〔図23_1〕、「24.法人の社員の役員報酬」〔図24_1〕、「25.顧問契約社数」〔表25-2〕、「26.売上内訳」〔表26-2〕〔表26-4〕、「27.受託業務範囲の内訳」〔表27-5〕、「32.過去と比べた需要変化」〔表32-8〕、「33.将来の自身の社労士事務所像」〔表33-1〕
    https://www.shakaihokenroumushi.jp/Portals/0/doc/nsec/souken/2024/202411_2024srchousa_shousai.pdf

数字は2026年10月23日時点で各発表元のページを確認した内容です。調査期間は2024年4月24日〜6月9日、有効回答は25,408人(回収率56.0%)。「その金額以上の割合」は、調査の区分ごとの割合(無回答を含む全体に対する割合)を足し合わせた値です。売上・人数・顧問先の数は個人事務所の代表と社労士法人の代表社員、所得は個人で開業している社労士、役員報酬は社労士法人の社員の回答です。