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社労士の売上の実態|中央値は550万円。開業年数と顧問先数で見る本当の分布【2024年度実態調査】

「社労士は年収1,000万円も夢じゃない」という記事をよく見かけます。たしかに1億円以上を売り上げる事務所もあります。でも、全国の開業社労士の真ん中の売上は550万円です。この記事では、全国社会保険労務士会連合会が公表した実態調査の数字だけを使って、社労士事務所の売上の「本当の分布」を整理します。

この記事の要点

  • 開業社労士の事務所の年間売上は、平均1,657.9万円、中央値550.0万円。
  • 売上1,000万円未満の事務所が約6割(60.5%)。一方で1億円以上も2.2%ある。
  • 開業5年未満の売上の中央値は135万円。年数とともに上がり、30年以上で1,200万円。
  • 売上をいちばんはっきり分けるのは顧問先の数。10〜19社で600万円、30〜39社で1,200万円、50〜59社で2,000万円(いずれも中央値)。
  • 550万円は通過点。1,000万円以上は33.8%、3,000万円以上は12.6%、1億円以上は2.2%。

社労士事務所の売上は「平均1,658万円・中央値550万円」

全国社会保険労務士会連合会(社会保険労務士総合研究機構)が2024年11月に公表した「2024年度社会保険労務士実態調査」によると、開業社労士の事務所1つあたりの年間売上は次のとおりです。

項目金額
平均1,657.9万円
中央値550.0万円

対象は、個人事務所の代表と社労士法人の代表社員14,469人です(調査全体の有効回答は25,408人)。

平均と中央値がこれほど違う理由

平均は、一部の大きな事務所に引っぱられます。売上1億円以上の事務所が全体の2.2%ありますが、この層が平均を大きく押し上げています。

中央値は、全事務所を売上の順に並べたときにちょうど真ん中に来る事務所の売上です。「ふつうの社労士事務所の売上はいくらか」を知りたいなら、見るべきは平均ではなく中央値の550万円です。

売上の分布:約6割が1,000万円未満

売上の区分ごとの割合は次のとおりです。

  • 「収入なし」「500万円未満」「500万〜1,000万円未満」を合わせると60.5%。1,000万円に届いていない事務所が約6割です。
  • 1,000万円以上は合計で33.8%。約3分の1の事務所は1,000万円を超えています。
  • 1億円以上の事務所は2.2%、実数で318事務所あります。

つまり、社労士事務所の売上は「みんながそこそこ」ではなく、1,000万円未満の大きな層と、数千万〜1億円超の層に分かれているのが実態です。

開業年数ごとの売上:5年未満の中央値は135万円

開業してからの年数で分けると、売上の中央値は次のように変わります。

開業年数売上の中央値売上の平均
5年未満135万円612.7万円
5〜9年500万円1,427.8万円
10〜14年660万円1,889.5万円
15〜19年800万円1,830.9万円
20〜24年900万円2,424.2万円
25〜29年1,000万円2,389.9万円
30〜34年1,200万円2,644.1万円
35年以上1,200万円2,716.7万円

開業5年未満では、「収入なし」が17.1%、「500万円未満」が49.4%です。開業直後の数年は、多くの事務所にとって売上を立てるまでの助走期間になっています。

ただし、年数を重ねれば自然に伸びるわけではありません。開業10〜14年でも中央値は660万円です。「長く続けているのに1,000万円に届かない」事務所が少なくないことも、この表から読み取れます。

売上をいちばん分けるのは「顧問先の数」

同じ調査には、顧問先の数ごとの売上も載っています。ここが、売上を考えるうえでいちばん大事な表です。

顧問先の数売上の中央値
0社20万円
1〜9社200万円
10〜19社600万円
20〜29社900万円
30〜39社1,200万円
40〜49社1,500万円
50〜59社2,000万円
60〜69社2,300万円
70〜79社2,600万円
80〜89社3,000万円
90〜99社3,200万円
100社以上5,500万円

顧問先が10社を超えると売上の中央値は600万円、30社を超えると1,200万円になります。全体の中央値550万円は、顧問先でいえば「10社前後」の水準です。実際、顧問先の数そのものも平均33.2社、中央値10.0社となっています。

また、事務所の売上のうち顧問契約による売上の割合は、平均で71.9%です。社労士事務所の売上は、ほとんどが顧問契約の積み上げでできています。

売上を伸ばしたいなら、まず「いま顧問先は何社か」「1社あたりの月額はいくらか」を確かめる。売上の話は、ここから始まります。

具体的な伸ばし方は、社労士の売上アップは「顧問先数×単価」の逆算からで詳しく解説しています。売上1,000万円・3,000万円の段階ごとに何を変えるかは社労士の売上の壁の越え方、顧問先の増やし方は社労士が顧問先を増やす方法をご覧ください。

社労士事務所の体制と仕事の中身

売上の背景として、事務所の体制と仕事の内容も見ておきます。

  • 事務所の人数:所長1人だけの事務所が56.4%。2人が11.1%、3人が6.3%です。
  • 事務所の場所:自宅の中にある事務所が49.1%、自宅の外が50.8%です。
  • 受けている仕事の割合(平均):手続業務41.5%、相談業務14.3%、給与計算14.2%、規程の作成・改定10.4%、コンサル業務7.3%。

半数以上が1人で事務所を回し、仕事の4割は手続業務です。1人で手続を中心に受けていると、受けられる顧問先の数には限りがあります。売上が550万円前後で止まりやすいのは、この働き方の上限とも関係していると考えられます。

売上の高い事務所ほど、情報を発信している

同じ調査では、事務所としての宣伝・情報発信の方法も聞いています。全体では「特段情報発信はしていない」が50.8%で、半数の事務所は発信をしていません。

これを売上の区分ごとに見ると、はっきりした差があります。

売上の区分事務所ホームページを開設特段情報発信はしていない
収入なし16.4%75.4%
500万円未満26.4%64.0%
500万〜1,000万円未満40.9%49.8%
1,000万〜2,000万円未満48.1%41.2%
2,000万〜3,000万円未満56.8%32.9%
3,000万〜5,000万円未満66.2%24.7%
5,000万〜1億円未満78.8%13.8%
1億円以上88.8%9.0%

売上1億円以上の事務所では、ホームページを持つ割合が88.8%、発信をしていない割合はわずか9.0%です。

ただし、これは「発信すれば売上が上がる」ことを示すものではありません。売上の大きい事務所ほど人手があり、発信に手が回るという面もあるはずです。言えるのは、売上の高い事務所で、発信をしていないところはほとんどないということです。

550万円は「通過点」:目指す売上の段階

売上の区分ごとの割合を、「その売上以上の事務所が全体の何%か」に直すと、次のようになります。

目指す売上その売上以上の事務所の割合顧問先の目安(売上の中央値から)
550万円約半数(中央値)10社前後
1,000万円33.8%25〜30社
3,000万円12.6%80社前後
5,000万円6.6%100社以上
1億円2.2%顧問契約だけでなく、高単価の商品と組織が必要

ちなみに平均の1,657.9万円を上回る事務所は、全体の2〜3割ほどです(2,000万円以上が19.3%、1,000万〜2,000万円未満が14.5%)。平均は「ふつうの事務所」の売上ではなく、上位の事務所の水準だと考えてください。

フツーの社労士脱却研究所では、開業初年度に中央値の550万円を越え、2年目に1,000万円、3〜5年目に3,000万円、5〜8年目に5,000万円〜1億円を目指す段階を目安にしています。550万円は、ゴールではなく最初の通過点です。

支援の現場から見える「550万円の壁」

ここからは数字ではなく、社労士事務所の支援をしてきた立場からの見方です。

売上が中央値のあたりで止まっている事務所には、次のような共通点がよく見られます。

  • 顧問先はほとんどが紹介。いつ、どこから次の依頼が来るか読めない。
  • 顧問料は開業時に決めた金額のまま。値上げを切り出したことがない。
  • 手続と給与計算で日々が埋まり、新しい商品やサービスを考える時間がない。
  • 事務所の情報発信をしていない、またはホームページが何年も更新されていない。

どれも、実務の力とは別の話です。差がつくのは、商品の組み立て方と、新しい顧問先が入ってくる入口の作り方です。同じ実務力でも、単価と顧問先が増える経路を変えた事務所は伸びています。

まとめ

  • 社労士事務所の年間売上は平均1,657.9万円、中央値550.0万円。平均だけを見ると実態を見誤ります。
  • 約6割が1,000万円未満。一方で1,000万円以上も約3分の1あり、二極化しています。
  • 売上をいちばんはっきり分けるのは顧問先の数。10社で600万円、30社で1,200万円、50社で2,000万円が中央値の目安です。
  • 売上の高い事務所ほど、ホームページなどで発信しています(ただし相関であって、因果ではありません)。

これから開業する方は社労士の開業ガイド【2026年版】、社労士の開業準備の流れ、社労士の開業の現実も参考にしてください。

出典

調査期間は2024年4月24日〜6月9日。全社労士45,401人を対象とし、有効回答は25,408人(回収率56.0%)。売上に関する数字は、個人事務所の代表と社労士法人の代表社員(14,469人)の回答です。