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社労士の3号業務(相談・コンサル)を増やすには|「5年後の強み」に選ばれる仕事を、顧問契約の商品にする方法

「手続中心の働き方から抜け出して、相談やコンサルの仕事を増やしたい」。多くの社労士事務所の所長が、そう考えています。実際、全国の開業社労士の調査でも、5年後に最も強みにしたい仕事は「コンサル業務」がトップでした。けれど、いまの仕事に占めるコンサルの割合は、まだ1割にも届いていません。この記事では、その差を埋めるために、3号業務を「頼まれたらやる仕事」から「顧問契約の商品」に変える方法を整理します。

この記事の要点

  • 開業社労士が5年後に最も強みにしたい仕事は、コンサル業務 28.7%、相談業務 24.4%。手続業務は13.0%にとどまる。
  • 一方、いまの仕事に占める割合(平均)は、コンサル業務が7.3%、相談業務が14.3%。手続業務は41.5%。
  • 5年前より需要が増えた仕事は、相談71.5%、規程の作成・改定66.2%、コンサル57.7%。需要はあるのに、商品になっていないのが3号業務の現状。
  • 2025年6月の社会保険労務士法の改正で、労務監査が3号業務として条文に明記された。

3号業務とは:相談・指導・コンサルティングの仕事

社会保険労務士の仕事は、社会保険労務士法第2条で大きく3つに分けられています。

区分主な内容
1号業務労働社会保険の諸法令にもとづく申請書などの作成、提出の代行、事務代理
2号業務労働者名簿や賃金台帳など、法令にもとづく帳簿書類の作成
3号業務労務管理や労働社会保険に関する相談・指導(コンサルティング)

1号・2号は社労士の独占業務ですが、3号業務は独占業務ではありません。そのぶん、中小企業診断士や人事コンサルタントなどとも比べられる仕事で、「社労士だから頼まれる」のではなく、「この先生だから頼みたい」と思ってもらう必要がある仕事です。

2025年の法改正で「労務監査」が明記された

2025年6月に成立した社会保険労務士法の改正(第9次改正)で、3号業務に、労務管理や労働社会保険に関する事項について「法令並びに労働協約、就業規則及び労働契約の遵守の状況を監査すること」が含まれることが明記されました(第2条第1項第3号)。この規定は、公布の日(2025年6月25日)から施行されています。

全国社会保険労務士会連合会は、これまでも行ってきた労務監査の仕事を、条文の上にはっきり位置づけたものだと説明しています。顧問先に「労務監査」というわかりやすい形で提案しやすくなったことは、3号業務を商品にするうえで追い風です。

5年後に強みにしたいのはコンサル。でも、いまは7.3%

全国社会保険労務士会連合会の「2024年度社会保険労務士実態調査」で、開業社労士に「5年後、どのような業務を強みとした事務所にしたいか」を聞いた結果と、いま受けている仕事の割合を並べると、次のようになります。

仕事の種類5年後に最も強みにしたいいまの仕事に占める割合(平均)
コンサル業務(企画・立案・制度設計など)28.7%7.3%
労働・社会保険に関する相談業務24.4%14.3%
手続業務13.0%41.5%
規程の作成・改定・整備8.3%10.4%
給与計算業務5.0%14.2%

「強みにしたい」のはコンサルと相談なのに、実際の仕事は手続が中心。このずれが、多くの事務所が抱えている課題です。

需要は、すでに増えている

同じ調査で、5年前と比べた顧問先からの需要の変化を聞くと、相談やコンサルは「増えた」が「減った」を大きく上回っています。

仕事の種類増えた減った
労働・社会保険に関する相談71.5%19.2%
規程の作成・改定・整備66.2%23.9%
コンサル業務57.7%29.8%
助成金業務42.1%43.6%

調査の自由回答でも、大きく増えた仕事として、労務相談やコンサル、トラブル・ハラスメントへの対応がよく挙げられていました。顧問先が求めているのに、事務所の側が商品として用意できていない。3号業務が増えない理由の多くは、ここにあります。

3号業務が増えない3つの理由

1. 「無料のおまけ」になっている

顧問先から相談を受けて、手続のついでに答えている。その相談が、顧問料の中の「おまけ」になっていると、どれだけ答えても売上にはなりません。顧問先から見ても、相談に値段がついていなければ、価値を感じにくくなります。

2. メニューと価格が決まっていない

「何でもご相談ください」は、頼む側からすると「何を頼めばいいのか」がわかりません。何を、どこまで、いくらでやるのかが決まっていないと、提案もできず、紹介もされません。

3. 時間がない

実態調査では、開業社労士の60.8%が「業務量の多さ」に不安やストレスを感じており、事務所の56.4%は所長1人です。手続で一日が埋まっていると、新しい商品を考える時間も、顧問先とじっくり話す時間もつくれません。

3号業務を商品にする5つのステップ

ステップ1:手続の中から、顧問先の困りごとを拾う

3号業務のいちばんの入口は、すでに受けている手続です。入社・退職の手続、育児休業の手続、残業代の計算。その一つひとつの裏に、採用、定着、労働時間、評価といった顧問先の困りごとが隠れています。毎月の対応の中で「この会社は、ここに困っている」と気づいたことを、メモに残しておきましょう。

ステップ2:困りごとを「メニュー」にする

拾った困りごとを、名前のついたメニューにします。たとえば次のようなものです。

メニューの例中身の例
労務監査法令・就業規則・労働契約が守られているかを点検し、報告書にまとめる
月1回の経営面談人の課題を社長と一緒に整理し、次の1か月でやることを決める
評価・賃金制度づくり評価の基準と賃金の決め方を、会社の規模に合わせて設計する
ハラスメント防止の体制づくり相談窓口、規程、研修を、まとめて整える
採用と定着の支援求人票の作成から、入社後の面談の仕組みまでを支援する

メニューごとに、何をするか(中身)、何を渡すか(報告書・規程など)、どのくらいの期間でやるか、いくらかを決めます。形が決まれば、提案も、スタッフに任せることもできるようになります。

ステップ3:顧問契約の「上位プラン」に入れる

単発のスポットとして売るだけでなく、顧問契約の上位プランに組み込むと、毎月の売上として積み上がります。たとえば「手続」「手続+相談」「手続+相談+月1回の経営面談」の3段階にすると、顧問先は自分に合った関わり方を選べます。料金表の組み立て方は社労士の顧問料アップ完全ガイドで解説しています。

ステップ4:手続を仕組みにして、時間をつくる

3号業務に使う時間は、手続を仕組みに任せてつくります。電子申請や生成AIを使った効率化の進め方は、社労士事務所の生産性向上でまとめています。

ステップ5:「この先生だから」と思ってもらえる発信をする

3号業務は独占業務ではないので、選ばれる理由が必要です。事務所の強みと、扱っているテーマを発信し続けると、「この分野ならこの先生」と思い出してもらえるようになります。発信の始め方は社労士の集客方法13選、相談を商品にして届ける考え方は社労士のマーケティングをご覧ください。

コンサルを商品にする形(スポット・顧問に上乗せ・研修)や値決め、最初の1社の取り方は社労士のコンサルの始め方でくわしく解説しています。助成金を職場の制度づくりと組み合わせる方法は社労士の助成金業務の始め方にまとめています。

よくある質問

3号業務は社労士でなくてもできますか?

3号業務は社労士の独占業務ではないため、ほかの専門家もコンサルティングを行っています。だからこそ、労働・社会保険の手続を通じて顧問先の実情を知っている社労士の強みを生かし、メニューと価格を決めて提案することが大切です。

労務監査とは何ですか?

労務管理や労働社会保険に関する事項について、法令、労働協約、就業規則、労働契約が守られているかを点検することです。2025年の社会保険労務士法の改正で、3号業務に含まれることが条文に明記されました。

相談に料金をもらうのは気が引けます

相談を無料のおまけにしていると、顧問先も価値を感じにくくなります。毎月の対応件数を報告に添え、相談の量と中身を見える形にしたうえで、相談を含むプランと含まないプランを分けると、自然に料金をいただけるようになります。

まとめ

  • 開業社労士が5年後に最も強みにしたい仕事はコンサル(28.7%)と相談(24.4%)。でも、いまの仕事に占めるコンサルの割合は平均7.3%です。
  • 相談・規程・コンサルの需要は、5年前より増えています。足りないのは、事務所の側の「商品」です。
  • 2025年の法改正で、労務監査が3号業務として明記されました。
  • 手続の中から困りごとを拾い、メニューと価格を決めて、顧問契約の上位プランに入れる。そのための時間は、手続の仕組み化でつくりましょう。

出典

「5年後に強みにしたい業務」「需要の変化」「不安やストレス」は開業社労士(開業と法人の社員、15,251人)、「いまの仕事に占める割合」「事務所の人数」は個人事務所の代表と社労士法人の代表社員(14,469人)の回答です。