会員の方は 会員ログイン ›

社労士事務所の生産性向上|電子申請と生成AIで「所長の時間」をつくり、売上につながる仕事に使う

「やることは山ほどあるのに、手が足りない」。社労士事務所の所長から、いちばんよく聞く言葉のひとつです。生産性向上というと「もっと速く作業すること」と思われがちですが、目的はそこではありません。手続や作業を仕組みに任せて、所長が売上につながる仕事に使える時間をつくることです。この記事では、全国の調査の数字をもとに、電子申請、生成AI、発信の自動化の順に、時間をつくる方法を整理します。

この記事の要点

  • 社労士事務所の56.4%は所長1人。開業社労士の60.8%が「業務量の多さ」に不安を感じている。
  • 電子申請を7割以上使っている事務所は52.3%。一方で「利用していない」も32.8%ある。
  • 生成AIは、案内文・規程の改定案・相談の回答などの下書きに向いている。最終確認は必ず人が行い、個人情報は入れない。
  • つくった時間は、5年後に強みにしたい人が最も多い相談・コンサルに使う。

社労士事務所は「1人で、手一杯」

全国社会保険労務士会連合会の「2024年度社会保険労務士実態調査」では、事務所の従業員総数(所長を含む)は「1人」が56.4%でした。半数以上の事務所で、所長が手続も、相談も、営業も、経理も、ひとりでこなしています。

開業社労士に職業生活での不安やストレスを聞くと、「業務量の多さ」に当てはまると答えた人は60.8%。事務所が受けている仕事の割合(平均)は、手続業務が41.5%で最も大きくなっています。

手続で一日が埋まり、新しいことを考える時間がない。これが、多くの事務所の売上が伸び悩む根っこにあります。

ステップ1:電子申請で、手続の時間を減らす

同じ調査で、電子申請の利用率を聞いた結果は次のとおりです。

電子申請の利用割合
7割以上利用している52.3%
5割以上利用している7.0%
3割以上利用している2.6%
3割未満利用している5.2%
利用していない32.8%

半数の事務所は電子申請を中心に手続を進めている一方で、3割以上の事務所はまだ使っていません。窓口に出向く移動時間や、紙の書類の準備にかかる時間は、電子申請にするだけで大きく減らせます。生成AIより先に、まず電子申請です。

ステップ2:生成AIで「下書き」を任せる

生成AIがいちばん力を発揮するのは、文章の下書きです。社労士事務所の仕事では、たとえば次のような場面で使えます。

使える場面生成AIに任せること人がやること
顧問先への案内法改正のお知らせ文の下書き内容と出典の確認、顧問先に合わせた修正
規程の改定改定案のたたき台、新旧対照の整理法令との照合、会社の実情に合わせた判断
労務相談論点の整理、回答文の下書き法令・通達の確認、最終的な回答
求人票社長の話をもとにした文章の下書き具体的な数字・固有名詞の追加
発信ブログ記事・SNS投稿の下書き事務所の考え方に合っているかの確認

大切なのは、生成AIに「答え」を出させるのではなく、「下書き」を出させて、人が確かめることです。生成AIは、もっともらしい誤りを書くことがあります。法令や数字は、必ず元の資料で確認しましょう。

労務相談での使い方は、noteの記事「社労士のChatGPT活用、労務相談は3工程に分けて下書きする」で詳しく解説しています。求人票の作り方は生成AIで求人票作成を30分で終わらせる方法をご覧ください。

個人情報は入れない

生成AIに、顧問先の従業員の氏名、マイナンバー、健康情報などの個人情報を入れてはいけません。相談内容は、個人が特定できない形に置きかえてから使います。どこまで入れてよいかの線引きは、noteの記事「社労士の生成AI利用、個人情報はどこまで入れていいか」にまとめています。業務ごとの使い方と、守るルール・導入の順番は社労士のAI活用ガイドでくわしく解説しています。

ステップ3:発信を自動化する

集客のための発信は、続けることがいちばん難しい仕事です。けれど、いまは生成AIを使って、記事づくりからブログ・SNSへの投稿、反応をもとにした改善までを仕組みにすることもできます。

法改正・助成金の一次情報メディア「労務ソース」は、行政機関の発表を毎日集めて記事にし、公開し、Xで告知するところまでを仕組みで回しています。所長が手を動かさなくても、毎日の発信が続く形にすることは、もう特別なことではありません。

つくった時間を、売上につながる仕事に使う

時間をつくっても、その時間を手続に使っていては、売上は変わりません。調査で開業社労士に「5年後、どのような業務を強みとした事務所にしたいか」を聞くと、コンサル業務が28.7%、相談業務が24.4%で、手続業務の13.0%を大きく上回っています。

電子申請と生成AIでつくった時間は、相談やコンサル(3号業務)を商品にすることに使いましょう。進め方は社労士の3号業務の増やし方、単価の上げ方は社労士の顧問料アップ完全ガイドで解説しています。

生産性向上のチェックリスト

  • 1週間の仕事を書き出し、手続・相談・営業・事務に分けて時間を測った
  • 電子申請に切りかえられる手続を洗い出した
  • 案内文や規程の改定案など、生成AIに下書きを任せる仕事を1つ決めた
  • 生成AIに入れてはいけない情報のルールを、事務所で決めた
  • ブログ・SNSの発信を、仕組みで続ける方法を決めた
  • つくった時間で取り組む、相談・コンサルのメニューを1つ決めた

よくある質問

生成AIの回答をそのまま顧問先に送ってもいいですか?

おすすめしません。生成AIは、もっともらしい誤りを書くことがあります。あくまで下書きとして使い、法令や数字は元の資料で確認し、顧問先に合わせて手を入れてから送りましょう。

何から始めればいいですか?

まだ電子申請を使っていないなら、電子申請から始めるのがおすすめです。すでに使っているなら、法改正のお知らせ文など、毎月くり返し書いている文章の下書きを生成AIに任せるところから始めると、効果を感じやすくなります。

1人事務所でも生産性を上げられますか?

1人事務所こそ、仕組み化の効果が大きくなります。所長の時間がそのまま事務所の売上の上限になるので、作業を減らした分だけ、相談やコンサル、発信に時間を使えるようになります。

まとめ

  • 社労士事務所の56.4%は所長1人。開業社労士の60.8%が業務量の多さに不安を感じています。
  • まずは電子申請。まだ使っていない事務所は32.8%あります。
  • 生成AIは下書きに使い、確認は人が行う。個人情報は入れない。
  • 発信は仕組みにして続ける。つくった時間は、相談・コンサルなど売上につながる仕事に使いましょう。

出典

  • 全国社会保険労務士会連合会・社会保険労務士総合研究機構「2024年度社会保険労務士実態調査」詳細版(2024年11月8日公表)。「13.事務所の規模」「15.電子申請利用率」「27.受託業務範囲の内訳」「30.社労士としての職業生活において感じる不安やストレス」「33.将来の自身の社労士事務所像」
    https://www.shakaihokenroumushi.jp/Portals/0/doc/nsec/souken/2024/202411_2024srchousa_shousai.pdf

事務所の規模・電子申請・業務の内訳は個人事務所の代表と社労士法人の代表社員(14,469人)、不安やストレスと5年後の強みは開業社労士(開業と法人の社員、15,251人)の回答です。